専任媒介契約期間が終了したら自動更新?更新しない場合どうすればいいのか【弁護士が解説】

この記事のざっくりしたポイント
  1. 専任媒介契約に自動更新はない
  2. 専任媒介契約を更新しない場合
  3. 解約による違約金や損害金は発生しない

媒介契約とは、不動産の購入・売却や賃貸借を希望する人が不動産業者(宅建業者)に対して、その相手方を探してもらうことを依頼し、依頼された宅建業者が相手方を紹介できるように営業活動を行うことを内容とする契約のことです。

複数の宅建業者に依頼するものを「一般媒介契約」と言い、専属の宅建業者に依頼するものを「専任媒介契約」と言います。

 

媒介契約とはどのようなときに契約するんですか?

 
 

例えば、おじいさまが亡くなられて土地を相続したけど、土地を使うあてもないので処分したいなぁと思われることがあるでしょう。そういったときに自分で買ってくれる人を探すのは大変なので、宅建業者に購入希望者を探してもらい、紹介してもらいたいということをお願いすることになります。その際に宅建業者との間で結ぶ契約が媒介契約と言われるものです。

 

このような媒介契約は、不動産を購入、売却、賃貸借を希望したときに宅建業者との間で結ばれるものですが、宅地建物取引業法(以下、「宅建業法」と言います)や行政の定める規則等の法律上の規制があります。

しかし、宅建業者の中にはこうした法律上の規制を守らずに不合理な契約を強いたりする例も見られます。その典型例の一つとして、専任媒介契約を自動更新していつまでも顧客を縛り、解約しようとしたら支払う必要のない報酬を請求するというものがあります

今回は、こうした専任媒介契約の自動更新の可否について、弁護士の視点から解説します。

専任媒介契約に自動更新はない

不動産の購入、売却などにおいて宅建業者に媒介を依頼する場合には、必ず媒介契約を結ぶこととされています。この媒介契約については宅建業法に定めがあり、宅建業法は宅建業者に対して契約書に記載すべき事項とその契約書を依頼者に交付しなければならないということを定めています(宅建業法34条の2)。

MEMO
この宅建業法34条の2において、媒介契約は自動更新されないことが明確に定められています。

契約期間は最長3ヶ月まで

宅建業法34条の2第3項では、媒介契約の有効期間は3か月であり、これよりも長い期間を定めた場合でも、その期間は3か月とすると定められています。

したがって、媒介契約の有効期間は最長で3か月です。

 

最長で3か月ということは、依頼者が希望しても更新は一切できないということですか?

 

 

そうではありません。宅建業法は、有効期間3か月の例外規定として依頼者が申し出た場合のみ有効と定めています。しかし、例外規定は依頼者の申し出のみを挙げていますので、宅建業者からの更新の申し出や、自動更新というのは認められません。

 

契約の更新は依頼者が申し出た場合だけ

宅建業法34条の2第4項では、依頼者が申し出た場合にのみ更新することができると定めています。したがって、依頼者が申し出れば媒介契約の更新が認められます。ただし、その期間は3か月です。

つまり、3か月毎に依頼者が更新を申し出ない限りは媒介契約は3か月の期間経過で当然に終了することとなります。

宅建業法ではこれ以外の例外規定を設けていませんので、宅建業者から更新を申し出ても契約更新されません。また、媒介契約に自動更新の約定があったとしても、そのような約定は宅建業法34条の2に違反し、無効ということになります(同条第10項)。

 

依頼者が更新を希望しない限りは3か月で有効期間満了ということは、依頼者としては更新を望まなければ何もしなくていいということですか?

 

 

法律上はその通りです。ただし、宅建業法を守らずに更新されている旨を主張してくる宅建業者もいますので、更新の意思がないのであれば明確にしておいたほうが良いでしょう。

 

専任媒介契約を更新しない場合

専任媒介契約を更新しない場合

宅建業法に則って考えれば依頼者が希望しない限りは媒介契約は3か月経過で当然に終了することになりますので、依頼者としては更新を望まないのであれば何もしなくて良いということになります。

しかし、宅建業者の中には依頼者が宅建業法を知らないであろうということを利用して、契約が自動更新されているとか、更新を拒否しなかった以上は更新することを希望したものとみなされるなどと言ってくることがあります。

そのようなことでトラブルに巻き込まれるのは面倒ですので、契約から3か月が近づいた時点で、専任媒介契約の更新の意思がないのであれば、その意思を明確に示しておいたほうが良いです。

その場合は、できれば電話などの口頭ではなく、書面かメールなど、形に残るもので更新しない意思を明確にしておきましょう。

 

宅建業者から、「媒介契約が自動更新された」と主張されたらどのように対応したらいいですか?

 

 

媒介契約の自動更新は、宅建業法に違反するものですので、宅建業者が法律違反行為を行っているということになります。そのような宅建業者に対しては、「宅建業法違反ではありませんか。媒介契約は期間満了で終了しています。」と強く主張しましょう。

 

不動産会社がルールを守らないとき

媒介契約の有効期間については宅建業法が明確に定めており、自動更新は認められません。しかし、宅建業者の中には、こうした法律の規制がありながらそれでもなお、媒介契約が自動更新されているとして、手数料等を請求してくる場合があります。

このように宅建業者がルールを守らないときには、どのように対処すればよいか、解説していきます。

途中解約も可能

媒介契約は3か月の有効期間内においては原則として解約できません。しかし、宅建業者側がルールを守らないときややむを得ない場合には途中解約も可能です。宅建業者は宅建業法において、媒介契約を締結した場合は購入申込等があれば直ちに依頼者に報告し、そうした申込みがない場合でも少なくとも2週間に1回は状況報告をすべき義務があります(宅建業法34条の2第8項、9項)。

また、媒介契約という契約の性質上、当該不動産の購入者募集広告を出したり、当該不動産が存する地域を対象として登録業務を行っている指定流通機構に当該不動産を登録するなどの営業上の努力をすべき義務もあります。

MEMO
こうした宅建業法上の義務や契約上の義務を宅建業者が守らない場合、怠っている場合には、依頼者としては契約違反(債務不履行)があるとして媒介契約を途中解約することができます。

不動産を売却する必要がなくなったなど、やむを得ない場合にも、媒介契約の有効期間内でも途中解約できるとされています。

 

途中解約したら、違約金とか手数料とか何らかのお金を請求されるかもしれません。その場合はどうすればよいのでしょうか?

 

 

宅建業者側に何らかのルール違反がある場合であれば、違約金などの名目の如何にかかわらず、金銭を支払う必要はありません。

 

違約金や損害賠償などは発生しない

宅建業者が状況報告をしない、募集広告・宣伝活動を行わないなど、宅建業者側のルール違反がある場合には、途中解約したとしても、違約金や損害賠償義務を負うことはありません。

場合によっては、途中解約までに要した広告費等の実費の精算を求められるかもしれませんが、依頼者側から積極的に依頼したことにより要した特別な費用を除いて、基本的に媒介契約期間中に要した広告費用等は宅建業者側が負担すべきものとされています。

したがって、宅建業者側のルール違反(債務不履行)により中途解約した場合には、違約金・損害賠償・手数料などの名目を問わず、金銭を支払うべき義務はありません。

MEMO
専任媒介契約が自動更新されたとして手数料などを求められたとしても、自動更新自体が違法ですので、金銭を支払う必要は全くないのです。

媒介契約のルールを守らない場合は、それを理由に解約を

宅建業法では、宅建業者に対して媒介契約に関して、営業努力・状況報告の義務を科し、更新に関しても依頼者が希望しない限りは有効期間3か月でそれ以上は更新されないことを定めています。

宅建業者は、免許制であり、誰でも自由にできるものではありません。国は、宅建物取引業保証協会を設置して、宅建業者が宅建業法を遵守して業務を行っているかどうかを監督しています。宅建業者が宅建業法に違反する行為を行った場合には、保証協会から指示や業務停止の措置を受けたり、免許を取り消されたりすることもあります。

それだけ宅建業者は宅建業法を守り、誠実に業務を行わなければなりません。宅建業者側が媒介契約に関して宅建業法に定められている義務や契約ルールを守らないということは、それだけで契約解除の正当な理由になります。

 

宅建業者がルールを守っていないと感じたら、どうすればいいですか?

 

 

弁護士に相談するというのも当然一つの方法としてありますが、宅建業者は行政の指導監督下にありますので、各都道府県の窓口や宅地建物取引業保証協会に相談してみるというのも有効な対策の一つです。

 

まとめ

宅建業者は、宅地建物取引業法を遵守しなければなりません。宅建業法上、媒介契約の有効期間は3か月であり、自動更新は認められていません。依頼者が申し出た場合にのみ更新されます。

宅建業者がこれを守らず、媒介契約が自動更新された旨を主張してきたら、宅建業法違反であることを毅然とした態度で主張しましょう。手数料等の何らかの金銭を請求されても支払う必要はありません。

悪質な宅建業者にお困りの方は、弁護士や行政に相談してみると、良い解決策が得られるでしょう。