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長期優良住宅とは?メリット・デメリットと基準、申請費用や手続きの流れと、補助金について

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

この記事のざっくりしたポイント
  1. 長期優良住宅は平成21年に施行された「長期優良住宅認定制度」の基準に適合し認定された住宅
  2. 長期優良住宅の認定を受けるためには各性能項目に適合して認定されることが条件
  3. 長期優良住宅は一般住宅を建築するよりも約1か月工期が長くなる

これまでの住宅は「造っては壊す」というスクラップ&ビルドの考え方で、住宅寿命としては30年~40年程度でした。しかし「大切に手入れをして長く使う」というストック型の考え方が徐々に増えてきました。その様な背景もあり100年に亘り数世代が暮らし続ける「長期優良住宅」という制度が、国土交通省により施行されました。

しかし「長期優良住宅のメリット・デメリットは何だろうか?」と考えておられる方はいませんか?実はメリットは税金・補助金・金利にあり、デメリットである建築価格・申請費用などをカバーするだけの魅力にあります。多くの住宅に関する相談事や悩み事を解決してきた不動産コンサルタントが、長期優良住宅の概要や税金面でのメリット、補助金・金利優遇、デメリット、申請の流れ・必要書類について解説します。

長期優良住宅は国としても重点を置いていますので税金・補助金・金利に対して様々な優遇措置を取り、資産価値向上にも有利にはたらくことがわかります。

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長期優良住宅とは?

長期優良住宅は平成21年に施行された「長期優良住宅認定制度」の基準に適合し認定された住宅です。長期間に亘り、良好な状態で安心・快適に暮らせる措置が講じられた優良住宅です。

長期優良住宅認定制度の基準

長期優良住宅の認定を受けるためには各性能項目に適合して認定されることが条件となります。性能項目にはバリアフリー性・可変性・耐震性・省エネルギー性・居住環境・維持保全計画・維持管理/更新の容易性・劣化対策・住戸面積があります。

性能項目 性能項目の内容
バリアフリー性
将来において、スロープを設置するなどのバリアフリーリフォームに対応できる必要な措置が講じられていること。
可変性
居住者のライフスタイルの変化に応じて、間取り変更などのリノベーションに対応できる措置が講じられていること。
耐震性
大規模地震(震度6~7)が発生した場合、建物の変形度合いが一定以下となる措置が講じられていること。(耐震等級2以上もしくは免震建築)
省エネルギー性
次世代省エネルギー基準に適合する断熱性能などを装備していること。(省エネルギー対策等級4以上)
居住環境
景観を損なわないデザインや地域における居住環境の維持・向上に配慮する措置が講じられていること。
維持保全計画
家屋の定期的な点検・修繕などに関する計画が作成されていること。
維持管理/更新の可能性
家屋本体と比較して、耐用年数が短い設備や内装について、維持管理が容易に行われる措置が講じられていること。
劣化対策
家屋の使用期間が100年以上(数世代)となる措置がとられていること。(床下空間330mm以上確保、劣化対策等級3相当)
住戸面積
戸建住宅:75㎡以上、1つのフロアの床面積が40㎡以上確保。マンション:55㎡以上の床面積を確保。

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長期優良住宅の税金面でのメリット

長期優良住宅を建てますと税金面でのメリットが多岐にわたります。具体的には住宅ローン控除、不動産取得税、登録免許税、固定資産税などがあります。それぞれ詳しく解説します。

住宅ローン控除の限度額が4,000万から5,000万円に引き上げ!

住宅ローン控除は住宅を建てる際に住宅ローンの借入を行った場合、年末時点の住宅ローン残高の1%が10年間に亘り、所得税と住民税から控除される制度です。長期優良住宅は、一般住宅と比較して、控除対象借入限度額の優遇措置があります。

  • 一般住宅の借入限度額  :4,000万円
  •  長期優良住宅の借入限度額:5,000万円

したがって控除率は1%であるため、最大控除額は10年間で以下となります。上記をまとめますと、下表になります。

  • 一般住宅の最大控除額  :400万円
  •  長期優良住宅の最大控除額:500万円

住宅ローン控除の主な適用条件は、以下などとなります。

住宅の種類 控除対象となる借入限度額
10年間の最大控除額
一般住宅 4,000万円 400万円
長期優良住宅 5,000万円 500万円

住宅ローン控除の主な適用条件
  1. 居住用家屋
  2. 住宅の引渡しもしくは完了から6か月以内に居住
  3. 床面積が50㎡以上
  4. 店舗などの併用住宅の場合、床面積の2分の1以上が居住用
  5. 住宅ローン借入期間が10年以上
  6. 合計所得金額が3,000万円以下

不動産取得税の控除が1,200万円から1,300万円に!

不動産取得税は不動産(土地・建物)を購入した場合や家屋の建築をした場合、新たに不動産を取得した際に課せられる税金です。課税標準額から規定の控除額を差し引いた残額に対して、3%の税率を乗じて算出されます。課税は、有償・無償、登記有無に関係なく、売買・贈与・交換・建築・増改築などにより不動産を取得した場合に成されます。長期優良住宅は、一般住宅と比較して、控除額の優遇措置があります。

控除額の優遇措置
  1. 一般住宅の控除額  :1,200万円
  2. 長期優良住宅の控除額:1,300万円

不動産取得税の控除の主な適用条件は以下などとなります。

不動産取得税の控除の主な適用条件
  1. 床面積が50㎡以上240㎡以下
  2. 都道府県の条例で定める申告

登録免許税0.15%が0.1%に引き下がる!

登録免許税は住宅を新築した場合の所有権保存登記や住宅を購入した場合の所有権移転登記の際に、不動産価格に税率を乗じて算出した金額となります。住宅の存する立地を管轄する法務局に対して、登記申請用紙に登記印紙を貼る形式で納税します。長期優良住宅は一般住宅と比較して税率の優遇措置があり、保存登記の場合以下となります。

保存登記
  1. 一般住宅の控除額  :0.15%
  2. 長期優良住宅の控除額:0.1%

移転登記の場合も記しますと下表の通りです。

 
住宅の種類
税 率
保存登記
移転登記
 
戸建て マンション
一般住宅 0.15% 0.3% 0.3%
長期優良住宅 0.1% 0.2% 0.1%

一戸建て5年、マンション7年の期間、固定資産税が半額に!

固定資産税は毎年1月1日時点での土地や建物などの固定資産を所有する人に対して課される市区町民税です。税額は、固定資産税課税標準額に1.4%(標準税率)を乗じて算出されます。長期優良住宅は、一般住宅と比較して、減額期間の優遇措置があります。

  •  一般住宅の場合  :戸建て;3年間、マンション;5年間
  •  長期優良住宅の場合:戸建て;5年間、マンション;7年間

上記をまとめますと下表になります。

住宅の種類
減額措置の適用期間
戸建て マンション
一般住宅 3年間 5年間
長期優良住宅 5年間 7年間

固定資産税の減額措置の主な適用条件は、

  •  床面積が50㎡以上280㎡以下

となります。

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長期優良住宅なら専用の補助金やフラット35の金利優遇なども受けられる!

 

税金面でのメリット以外に、他のメリットはありますか?

 
 

各種補助金や金利の優遇制度が準備されています。

 

地域型住宅グリーン化事業(補助金上限100万円)

長期優良住宅は木造新築の場合、地域型住宅グリーン化事業の補助対象となり、上限額:100万円までの補助金を受け取ることができます。地域型住宅グリーン化事業は、以下がグループ(連携体制)を構築しています。

地域型住宅グリーン化事業
  1. 地域の木材関連事業者
  2. 建材流通事業者
  3. 中小住宅生産者など

グループごとの住宅生産システムの共通ルールに基づき以下に対して支援を行う制度です。

  • 省エネルギー性能や耐久性などに優れた木造住宅
  • 木造建築物の整備、木造住宅の省エネ改修、これと併せて行う三世代同居への対応

本事業の適合条件としては以下となります。

本事業の適合条件
  1. 主要構造部(建築基準法第2条第5号)が木造のもの
  2. 採択されたグループごとの地域型住宅の共通ルールに即して、グループの構成員である中小住宅生産者などにより供給される新築住宅

長期優良住宅化リフォーム推進事業(補助金上限250万円)

既存住宅をリフォーム(増改築)などにより所管行政庁から長期優良住宅と認定された場合、長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助対象となり、上限額:250万円までの補助金を受け取ることができます。長期優良住宅化リフォーム推進事業は以下などを図るため、既存住宅の長寿命化や省エネ化などに資する性能向上リフォームや子育て世帯向け改修に対する支援を行うことを目的とします。

  • 良質な住宅ストックの形成
  • 子育てし易い生活環境の整備

本事業の適合条件としては、以下のうち一つ以上実施となります。

●リフォーム工事前にインスペクションを実施、維持保全計画・リフォーム履歴の作成

●リフォーム工事後に下記の性能基準を充足

   ・<必須項目>劣化対策、耐震性(新耐震基準適合性など)、省エネルギー対策の基準

   ・<任意項目>維持管理・更新の容易性、高齢者対策(共同住宅)、可変性(共同住宅)の基準

 

●上記性能項目のいずれかの

   ・丸性能向上に資するリフォーム工事

   ・三世代同居対応改修工事

   ・子育て世帯向け改修工事

   ・防災性・レジリエンス性の向上改修工事

【フラット35】Sで金利が10年間引き下げ!

長期優良住宅は【フラット35】S(金利Aタイプ)の条件に適合し【フラット35】の借入金利から年0.25%の金利が下がる優遇措置があります。【フラット35】Sは【フラット35】申請者が長期優良住宅などの省エネルギー性・耐震性などを備えた高品質な住宅取得する際に、【フラット35】の借入金利を一定期間引き下げる制度です。住宅の技術基準に応じて、2つの金利引き下げメニューがあります。

金利引下げメニュー 金利引下げ期間 金利引下げ幅
【フラット35】S金利Aタイプ 当初10年間
【フラット35】の借入金利から
年0.25%
【フラット35】S金利Bタイプ 当初5年間

また長期優良住宅は【フラット50】の利用が可能となります。【フラット50】は借入期間が最長50年の全期間固定金利の住宅ローンです。住宅ローン融資時に、最長50年間の借入金利と返済額が確定します。

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長期優良住宅のデメリット

 

長期優良住宅のデメリットは何ですか?

 
 

建築工期が長くなり、建築コスト・申請コストが高くなります。

 

一般の住宅を建てるよりも日数がかかる

長期優良住宅は一般住宅を建築するよりも約1か月工期が長くなります。その理由は上記で解説した様々な性能項目(バリアフリー性・可変性・耐震性・省エネルギー性・居住環境・維持保全計画・維持管理/更新の容易性・劣化対策)を満たす必要性が生じるからです。

ただし、大手ハウスメーカーにおいては一般住宅の場合でも上記の性能項目の多くを既に標準仕様として採用している住宅があります。その場合には、長期優良住宅の建築であっても、工期が1~2週間程度長くなるだけで済みます。また、長期優良住宅の建築経験やノウハウを保有する工務店や建築設計事務所の場合、スムーズに建築工事を進めることが可能です。事前に実績の確認をしておくと安心です。

MEMO
しかし、一般の中小工務店の場合には単品受注生産方式を採用している会社が一般的となり、標準仕様を特に定めていないケースも少なからずあります。その場合には長期優良住宅の建築に1か月ほど工期が延長します。

維持保全計画により最低でも10年に一度の点検が必要になる

長期優良住宅の性能項目の中に維持保全計画があり、最低でも10年に一度の割合で点検を行う必要があります。点検の度に点検費用がかかり、家屋の状況によっては、修繕費用が高くつくケースもあります。点検義務の無い一般住宅と比較しますと、点検費用・修繕費用が定期的に発生する点がデメリットともいえます。

申請費用と必要な書類の準備などが大変

長期優良住宅の申請手続きには数千円~数万円の費用と多くの書類作成が必要となり、準備が大変となります。長期優良住宅は登録住宅性能評価機関において事前審査(技術的審査)を通過した後に、所管行政庁へ申請する流れとなります。その際、登録住宅性能評価機関が発行する「適合証」の提出が必要になります。また所管行政庁においてさらに審査があり、認定されますと「認定通知書」を受領することができます。

上記の申請手続きには所管行政庁で数千円かかり、事前審査(技術的審査)を行いますと、数万円かかります。合計5万円~6万円といったところです。ただし上記は自身で申請する場合の金額です。ハウスメーカーや工務店・建築設計事務所などを通して申請しますと20万円~30万円の手数料が必要になります。

建築コストが少々高くなるケースもある

長期優良住宅は一般住宅を建築するよりも建築コストが高くなります。その理由は建築工期と同様に様々な性能項目を満たす必要性が生じるからです。ただし大手ハウスメーカーにおいては一般住宅の場合でも、上記の性能項目の多くを既に標準仕様として採用している住宅があります。その場合には長期優良住宅の建築であっても、建築コストの上乗せはさほどありません。しかし一般の中小工務店の場合には、一般住宅を建築するよりも20%~30%ほど上乗せになる場合もあります。

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長期優良住宅認定申請手続きの流れと必要書類について

長期優良住宅の認定申請は着工前までに行う必要があります。先ず登録住宅性能評価機関において事前審査(技術的審査)を通過する必要があります。その後、立地の所管行政庁(都道府県もしくは市区町村)へ申請する流れとなります。

STEP1:工事着工前に必要書類を提出する

「長期優良住宅建築等計画」の作成を行います。意匠・構造・設備関係図書は、建築を依頼するハウスメーカーや工務店、建築設計事務所に作成してもらいます。申請の全てを業者に依頼する場合、委任状が必要になります。

申請に必要な書類一覧

長期優良住宅の技術的審査に必要な書類は下記の通りです。

長期優良住宅の技術的審査に必要な書類
  1. 認定申請書
  2. 長期優良住宅建築等計画に係る技術的審査依頼書
  3. 設計内容説明書:認定基準適合の根拠となる設計内容を説明するための書類
  4. 委任状:建築主以外が手続きを行う場合に必要
  5. 意匠・構造・設備関係図書(各種図面、仕様書、計算書など)

STEP2:登録住宅性能評価機関へ事前審査依頼する

上記の書類一式が準備できましたら、それらを登録住宅性能評価機関へ提出し、事前審査(技術的審査)依頼を行います。

STEP3:登録住宅性能評価機関の審査

登録住宅性能評価機関は9つの性能項目の中で、劣化対策・耐震性・維持管理/更新の容易性・可変性・バリアフリー性・省エネルギー性・住戸面積・維持保全計画の8つについて審査を行います。

STEP4:適合証を登録住宅性能評価機関から受理する

上記8つの性能項目について認定基準を満たしていれば「適合証」を発行します。申請者は、「適合証」を受理し、所管行政庁への認定申請に備えます。

STEP5:適合証と認定申請書を所管行政庁へ提出

登録住宅性能評価機関から受理した「適合証」と認定申請書を所管行政庁へ提出し審査依頼を行います。この認定申請は、工事着工前に行う必要がありますので、注意が必要です。所管行政庁は性能項目の中で「居住環境の維持及び向上への配慮」について審査を行います。

STEP6:所管行政庁の審査通過後は認定通知書受理し完了

所管行政庁は認定基準を満たしていれば「認定通知書」を発行します。申請者は「認定通知書」を受理して完了します。

東京都住宅政策本部のHPより引用

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まとめ

以上、長期優良住宅の概要や税金面でのメリット、補助金・金利優遇、デメリット、申請の流れ・必要書類について解説しました。これまでの一般住宅は、30年~40年ほどで建替えを行うなど、環境面にも負荷の大きい住宅でした。

しかし、長期優良住宅は100年に亘り数世代が住み続ける住宅となりますので、その分スクラップ&ビルドの回数が減少し、地球環境にも優しい住宅ともいえます。特に先進国は、地球温暖化のペースをストップさせるためにCO削減に躍起となっています。日本としても、CO削減に貢献できる長期優良住宅に重点を置くことは、当然といえます。地球環境や自身の良好な資産形成のためにも、長期優良住宅での建築計画の検討を進められることをおすすめいたします。