【宅建士が解説】中古マンションと実施が始まったホームインスペクション

この記事のざっくりしたポイント
  1. ホームインスペクションとは?
  2. どうやってするの?
  3. ホームインスペクションでどんないいことがあるの?

今回は、そもそもホームインスペクションとはどのようなことを指すのか、そしてなぜ2018年から実施されているホームインスペクションの説明の義務化が注目されているのかについて解説していきます。

ホームインスペクションとは?

ホームインスペクションとは、つまり住宅診断のことを指します。ホームインスペクターと呼ばれる住宅診断士が中立的な立場から、住宅の劣化状況や欠陥の有無、修理が必要な箇所とそれに必要となる費用の見積もりなどを行い、住宅の売り手と買い手の双方にアドバイスを行います。

ホームインスペクターは、ホームインスペクター協会が2009年から実施している「公認ホームインスペクター(住宅診断士)資格試験」に合格し、認定された人に付与される民間資格であり、ホームインスペクションの専門家です。なお、ホームインスペクターは建築士の資格を保持していることが前提となっています。

住宅を売却する前、また購入する前にホームインスペクションを実施することで、住宅のコンディションを把握したうえで、双方が安心して売買契約を進めることができます。契約後のトラブルを予防するのに効果的であると言えます。

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ホームインスペクションの実施方法

ホームインスペクションは、非破壊の住宅診断です。まずは目視によって、屋根、外壁、室内、小屋裏、床下などの劣化状態を診断することが基本となります。

そのため、壁の中や天井裏といった、破壊しなければ確認できない箇所の診断はできませんが、目視できる範囲からコンディションを推測することは可能です。

外壁や床下の基礎の劣化はどの程度であるか、雨漏りの兆候はないかといったことを目視で診断し、その結果を依頼主に正確に伝えるところまでがホームインスペクションです。機材を用いた精密検査が必要になった場合は、ホームインスペクターがその旨を説明し、依頼主の判断を仰いだうえで精密検査の専門業者に橋渡しをします。

ホームインスペクションは誰が利用する?

ホームインスペクションは、「住宅の売主と買主のどちらが実施しなければならない」といった決まりはありません。売主と買主のどちらでもなく不動産仲介業者が実施することもあります。

ホームインスペクションの費用は、基本的には実施した人が負担することになりますがケースバイケースです。なお、買主がホームインスペクションを実施する場合、正式な売買契約がなされる前であれば、当然ながら売主の許諾が必要となります。

ホームインスペクションの結果によっては住宅購入のキャンセルや売買価格の交渉が必要になることもありえます。そのような事態を想定したうえで、正式な売買契約の前段階である購入申込書を提出した後のタイミングで行われることが多いです。

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ホームインスペクションの活用方法

新制度で変わったこと

MEMO
2016年5月に、宅地建物取引業法(宅建業法)改正案が国会において成立しました。この改正案によって、2018年4月から中古住宅の取引の際に、ホームインスペクションの説明をすることが義務化されました。

宅建業法改正の背景には、日本国内の住宅供給の充足に伴い、新築ではなく中古住宅の活用とその質の向上が喫緊の課題となった状況があります。中古住宅売買に関するトラブルをできるかぎり防ぎ、安心して売買できる地盤を固めたいという政府の思惑から、宅建業法改正の動きにつながったと言えるでしょう。

ホームインスペクションについての説明とは?

2018年4月以降は、中古住宅の売買を不動産仲介業者が媒介するにあたって、売買契約前の重要事項説明の際に、その住宅がホームインスペクションを受けた履歴があるかどうか、今後実施する意向はあるかといった内容が確認されることになります。

つまり、ホームインスペクションの実施自体が義務化されたわけではありませんが、ホームインスペクションについての説明が義務化されることで、中古住宅の売買契約前にホームインスペクションという言葉とその内容を知り、実施するかどうかを考える機会が与えられるということです。

ホームインスペクションをしてくれる業者なんて私知らないんですが…

もちろんそういった人のために、2018年4月以降は不動産仲介業者が物件の仲介に加えてホームインスペクションについての説明と、実施が決まった際にはホームインスペクションを実施する業者をあっせんすることも重要な業務の一つになったんだよ。

ホームインスペクション活用に寄せられる期待

ホームインスペクションの普及により、まずは中古住宅売買契約後のトラブルの予防が期待できます。そして、第三者であるホームインスペクターの目が入ることにより安心して契約を結ぶことができます。

また、ホームインスペクションを実施するにあたって、もしもホームインスペクションでは確認できない箇所に重大な欠陥が発覚した場合、その補修費用を保険金でまかなえる「既存住宅瑕疵保険」へ加入しておくのを自然と促すことも期待されています。

ホームインスペクションを広く普及させ、さらに既存住宅瑕疵保険への加入を促すことは、中古住宅売買を活性化するための大きな追い風となるでしょう。

ホームインスペクションの課題

2018年4月以降、ホームインスペクションの活発化が期待されますが課題も残っています。まず、ホームインスペクションの実施依頼が急増した際に、ホームインスペクターの数が足りるのか懸念されています。研修の強化や、ホームインスペクターの門戸を建築士以外にも広げることも検討する必要が出てくるかもしれません。

また、現在は実施後1年以内とされているホームインスペクションの有効期間についても検討の余地が残っています。実施後に災害が起きた場合はどうするかなどをはじめ、細かな条件を定める必要があるでしょう。

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まとめ

2018年4月以降は中古住宅を売買する人は必ずホームインスペクションについて考える機会を得ることができるようになりました。このことは、中古住宅の売主と買主の双方に能動的な変化が求められていると言えます。

MEMO
つまり、売主には所有する住宅についての正確な情報を開示すること、買主にはホームインスペクションという選択肢を知ったうえで、ホームインスペクションを実施するか否か、購入を検討している住宅のコンディションの把握、既存住宅瑕疵保険に加入するか否かといった判断が必要となるということです。

ホームインスペクションは、いまある資源である中古住宅活用の促進は言うまでもなく、売買に関わるすべての人が情報を適切に取捨選択し、誠実に交渉を行い、信頼関係を築いたうえで契約に至るという健全な中古住宅売買の足掛かりとしての活用が大いに期待されます。ホームインスペクションの活用によって、日本の中古住宅売買の成熟期へ突入する一歩となると言っても過言ではありません。

中古中宅の売買を検討している人はぜひ、ホームインスペクションについてしっかりと調べて、悔いのない売買契約のためにも最大限に活用してはいかがでしょうか。わからないことがあれば、不動産仲介業者に相談してみることをおすすめします。

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