- 「決められた施工会社で一定期間内に建てること」という条件がついている土地
- 価格の安さや施工会社を選ぶための手間を省けることなどがメリット
- 相見積もりができないため値引きが難しいというデメリットもある
マイホームを建てるために土地を探している人の多くは「建築条件付き土地」という言葉を目にしたことがあるでしょう。周囲の土地相場と比較して安いことが多いため、魅力を感じる人もいるかもしれません。しかし建築条件付きの土地にはデメリットや注意点があります。
この記事ではそもそも建築条件付き土地とは何なのかを解説します。メリットやデメリット、注意点も詳しく説明しますので、ぜひ土地選びの参考にしてください。
建築条件付き土地(売り建て)とは
建築条件付き土地とは「一定期間内に、指定した建設業者で家を建てる」という条件がついた土地のことをいいます。通常、買った土地にどんな家を建てるか、いつ建てるかは買主の自由ですが、建築条件付き土地では建てる時期や施工会社が制限されているのです。
建築条件付き土地では施工会社が決まっているほか、家のデザインや設計もおおよそ決まっています。家の設計にはある程度の希望は取り入れられますが注文住宅と比べると自由度が低いと言わざるをえません。建築条件付き土地とは土地と建物をセットで販売する建売住宅と似たような形式ですが家を建ててから売るのではなく、まず土地を売ってから家を建てる形式です。
建築条件付き土地購入~建築完成までの流れ
建築条件付きの土地を購入してからマイホームが完成するまでの流れを説明します。具体的には以下ステップです。
STEP1 土地の売買契約を締結させる
希望の土地が見つかったら「申込み」と「土地・建物ローンの事前審査」を行います。このときに「土地売買契約日時」が決まります。契約日には「重要事項説明書」「売買契約書」の内容について説明を受け、契約を結びます。その際土地代金の手付金として代金の10%程度が必要です。
「手付金」は土地代金の一部に充当されますが契約から引き渡しまでの間に買主の都合でキャンセルする場合、手付金は戻ってきません。この日に行われるのは土地の売買契約のみです。建物に関する契約は打ち合わせを重ねてから行うものなので土地の売買契約と建物の契約は別の日になります。
STEP2 指定された施工会社と建築工事請負契約を締結
土地の契約後、指定された施工会社と建物のプランについての打ち合わせを何度か行います。その後一定期間内に建築工事請負契約を締結します。この期間は購入した建築条件付き土地によって異なりますが、おおむね3ヶ月以内です。
その後工事契約金として工事費用の約10%~20%を支払い、建築確認申請の手続きや建物に対するローンの正式申込みを行います。工事請負契約後に土地の残金を支払い、土地の引き渡しとなります。
STEP3 着工開始~完成
建築工事請負契約を締結したら建物の工事が始まります。柱がすべて立ち上がった状態(上棟)になれば電気配線などの現地確認が可能です。建物が完成(竣工)したら、できあがった建物の状態を最終チェックします。問題があれば補修し、建物が完成です。建物工事着工時に「着工金」、上棟時に「中間金」を支払います。
STEP4 引渡し
引渡し時にはローンが実行され建築費の残代金を支払います。建物の鍵・保証書・取扱説明書一式・竣工図などを説明とともに受け取ります。
事務員
浜崎編集長
建築条件付き土地のメリット
建築条件付き土地には以下5つのメリットがあります。
- 建築条件付き土地は割安になっている
- 間取りや内装はある程度自由に決めることができる
- 施工会社選びが不要
- 欠陥工事を未然に防ぐことができる
- 建築条件付き土地の方が住宅ローンを借りやすい
それぞれ詳しく説明します。
建築条件付き土地は割安になっている
建築条件付き土地は建築条件の付かない土地に比べて価格が安く設定されています。それは「土地を売るだけでなく家を建てることでも利益が出せるため、土地代にのせる利益を少なくできる」からです。
間取りや内装はある程度自由に決めることができる
先に述べたとおり建築条件付き土地に建てる住宅の間取りや内装は制限があるものの、ある程度自由に決めることができます。注文住宅と同じとまではいえませんが、ある程度こだわりのある家を建てられるでしょう。
施工会社選びが不要
注文住宅を建てるときに悩むことのひとつが施工会社(ハウスメーカー)選びでしょう。多くのハウスメーカーや工務店のなかからどこに依頼するかで迷っているうちに、家づくりに疲れてしまう人も少なくありません。建築条件付き土地なら、はじめから施工会社が指定されているため、施工会社選びに苦労する心配はないでしょう。
欠陥工事を未然に防ぐことができる
建築中の様子をチェックすることで、欠陥工事を未然に防げる点も建築条件付き土地で家を建てることのメリットです。たとえば建売住宅は完成後の状態でしか検査できません。
建築条件付き土地の方が住宅ローンを借りやすい
注文住宅も建築条件付き土地も土地の費用と建物の費用を別々に支払わなければなりません。そのため住宅ローンの契約は「土地先行融資」や「つなぎ融資」を利用しなければならず、やや手続きが複雑になります。
しかし建築条件付き土地は土地と建物両方についての手続きを担当者に一括で任せられるため、注文住宅よりも手続きがかんたんで借りやすいといえるでしょう。また先に土地だけを購入し別の建築業者と建物の契約をする場合に比べて建築条件付き土地は土地と建物の総予算の把握がしやすいため、住宅ローンで借りる金額の計算がスムーズにできます。
建築条件付き土地のデメリット
建築条件付き土地にはメリットがある一方、デメリットもあります。主なデメリットである以下3点について解説します。
- 施工会社を自由に選ぶことができない
- 期限内で間取りや仕様を決める必要があり、必ず希望通りになるわけではない
- 相見積もりが取れないため、比較検討ができない
施工会社を自由に選ぶことができない
建築条件付き土地の条件のひとつが指定された施工会社で住宅を建てることです。希望するハウスメーカーや工務店が別にある人にとって、この点は大きなデメリットでしょう。施工会社によって得意なデザインや工法は異なりますので、外観や間取りなど家づくりにこだわりのある人は契約前に「どの施工会社が指定されるのか」を確認しておきましょう。
期限内で間取りや仕様を決める必要があり、必ず希望通りになるわけではない
建築条件付き土地では土地の売買契約を締結してから建物の工事請負契約を結ぶまでの期間がおおむね3ヶ月と決まっています。つまり3ヶ月以内に間取りや仕様を決定しなければいけないということです。
外観デザインや間取り、設備や壁紙など、家づくりでは決めなければならないことがたくさんあります。仕事の都合で打ち合わせに多くの時間を割けない人にとっては、この3ヶ月は短すぎると感じるでしょう。
また多くの場合、建築条件付き土地の住宅は施工会社の用意した標準プランのなかから好きなものを選択することになります。そのため「地下室を作りたい」などといった特殊な要望には応えられないことが多いでしょう。
相見積もりが取れないため比較検討ができない
建築条件付土地の場合、施工業者同士の相見積が取れません。そのため提示された見積もり金額が適正かどうかを判断するのが困難です。仮に相見積もりをとったとしても施工業者の変更は不可能ですので、値引き交渉は難しいでしょう。
建築条件付き土地を購入する際の注意点
これまでに説明した建築条件付き土地の特徴やメリット・デメリットを踏まえて、建築条件付き土地を購入する際の注意点を解説します。
建築工事費用も仲介手数料の対象になる可能性も
建築条件付き土地を不動産仲介業者の紹介で購入するときには土地売買についての仲介手数料を買主が支払います。建築条件付き土地はあくまでも土地の売買で建物の売買ではありませんので支払う必要があるのは土地売買に対する仲介手数料のみです。
浜崎編集長
土地探しをしている場合、建築条件を外せるケースもある
土地探しをしていて見つけたのが建築条件付き土地の場合「施工会社を自分で決めたいから建築条件を外したい」と思う人も少なくないでしょう。原則は建築条件付き土地の条件は外せません。ただし売れない土地を保有し続けることは不動産会社にとっても不都合なため、長期間売れずに残っている土地であれば条件を外してもらえることがあります。
たとえば大規模開発の際に売れ残った土地などです。ほかには提示されている土地価格に数百万円の金額を上乗せして支払えば、建設条件を外してくれることもあるようです。
工事監理や社内検査を適切に行っていないケースもある
建築上の工事品質が管理されていないと住み始めてからさまざまな不具合が起こるかもしれません。修繕によって対応できない致命的な問題の場合、解決するためには相当な時間と労力がかかります。トラブルを回避するため、工事監理や社内検査を適切に行われているかチェックしましょう。不安な人は建築の途中でホームインスペクション(住宅検査)を利用するのも手段のひとつです。
まとめ
「決められた施工会社で一定期間内に建てること」という条件がついている土地が、「建築条件付き土地」です。価格の安さや施工会社を選ぶための手間を省けることなどがメリットとして挙げられます。
一方で3ヶ月という短期間で間取りや仕様を決める必要があること、相見積もりができないため値引きが難しいというデメリットもあります。購入する際には必ず契約書の内容を確認し、施工会社についてもチェックするようにしましょう。