残置物いらない場合はどうする?撤去費用は誰が払うのか【弁護士が解説】

この記事のざっくりしたポイント
  1. 残置物がいらない?最終的にオーナーが判断
  2. 残置物の撤去費用は誰が払うのかを解説
  3. 事前にリスク回避することが重要

この記事をご覧の皆さんの中には、引っ越しの際に借主が置いていった残置物の取り扱いについてどのようにすればいいのかという疑問を抱いている人もいるのではないでしょうか。

残置物があって助かったという人もいれば、残置物がいらない方もいるでしょう。

残置物の取り扱いについては不動産の賃貸借契約において問題になる事項の1つですが、事前に知識をつけておけばトラブルが発生した際に円滑に対応することができます。

そこで今回は、引っ越しの際に借主が置いていった残置物の取り扱いについてどのようにすればいいのか、また撤去費用は誰が払うのかについて説明します。

残置物の読み方と意味

残置物の読み方と意味

残置物は「ざんちぶつ」と読みます。残置物の取り扱いについての説明を始める前に、残置物とはどのようなもののことで、付属している設備との相違点ついて知っておくことが重要になります。

ここでは、それらの具体的な内容について説明します。

残置物と設備の違い

「残置物」とは、賃貸物件において前の入居者が退去時に後始末をせずに残していった物品などのことで、エアコンなどの生活用品やその他のものなど幅広いものが対象になります。

残置物と設備の違う点は、オーナーが賃貸サービスの内容の一環として取り付けたものか、前の入居者が後から取り付けたものかという点です。設備として付属されているものと残地物とでは、賃貸借契約において扱いが異なってくるため、両者は違うものであるということをしっかりと認識しておきましょう。

 

残置物とは貸主の許可なく置いていったもので、設備とは貸主が賃貸借契約の対象物として事前に物件に備えつけているものという認識でいいのでしょうか?

 

 

そうですね。基本的にはそのような認識で問題ありませんが、借主から見た場合はどれが残置物でどれが設備なのか分からないため、契約の段階できちんと確認しておくようにしましょう。

 

残置物がいらない場合は?撤去費用は誰が払うのか

残置物がいらない場合はどうする?

 

いらない残置物を最終的にどうするかについては、オーナーが判断するのが一般的です。オーナーが残置物を対処する際の問題としてどのようなものがあるのかについて説明します。

「原状回復義務」では入居者負担

民法によると基本的に借りていた部屋を退去する際の原状回復義務は入居者にあり、自分が置いた物は撤去してから退去しなければなりません。また、そのうえでかかる費用についても当然のことながら入居者が負担することになります。

貸主の了承を得ずに入居者が置いていった残置物は、以前の入居者が未だ所有権を持っているものなので、貸主が自己負担で処分・撤去を行ってかかった費用については以前の入居者に請求することができます。

しかし、貸主が前の入居者から残置物の所有権について引き受けた場合には、この残置物の所有者は貸主になるので、入居者は原状回復義務を負う必要がなくなります。

 

前の入居者の残置物があり、不要なものなので引き受けるつもりはないのですが、前の入居者と連絡が取れない場合、勝手に処分してもいいのでしょうか?

 

 

残置物はいまだ前の入居者に所有権があるので勝手に処分することは許されず、もしもその残置物について処分したい場合には裁判所に申し立てし、明け渡し訴訟を起こして強制執行手続きをとる必要があります。

 

新しい入居者に貸したら貸主の所有物に

残置物については前の入居者から貸主が譲り受けた場合、貸主の所有物となり残置物ではなく物件の設備の一環となります。

しかし、貸主の了承なく放置していったものは未だ残置物であり、前の入居者と連絡が上手くとれず次の入居者にその残置物を含めて物件を貸した場合、その残置物の所有権は貸主が取得することになります。

注意
その残置物を引き受けることを了承したかしていないかに関わらず、貸主が引き受けたとみなされるのです。

また、原状回復義務の部分で説明したように貸主がその残置物の所有権を取得することによって自身の物件に備え付けられている設備になることから、基本的にそのものに関しての原状回復義務などを負うことになってしまいます。

 

残置物について貸主側にとって不要で引き受ける意思表示を特にしていなくても、新しい入居者に貸してしまえばその残置物を引き受けたとみなされてしまうのはなぜでしょうか?

 

 

貸主にとって残置物が必要ないのであれば、それを処分してかかった費用を元の借主に請求するべきにもかかわらず、残置物をそのままにしておいたということは、その物が不要ではないと判断したと考えられるからです。

ただし、事前に家賃保証会社と契約しておくことで、このようなオーナー側のリスクを回避することも可能です。家賃保証とは借主の滞納家賃を保証するサービスのことですが、その他にも退去時の残置物処理費用や明け渡し起訴費用なども保証範囲としていることがほとんどのため、あらかじめ確認しておくと安心でしょう。

事前にリスク回避することが大切

ここまで説明してきたように、前の入居者から残置物を引き受ける意思表示をしたり、特段の意思表示がなくても次の入居者にそのまま物件を貸したりした場合には、その残置物の所有権について取得することになります。

しかし、貸主にとっては残置物は引き受けても良いが、原状回復義務は引き受けたくないという場合もあるでしょう。

そのような場合には、賃貸借契約を結ぶ際の契約書に残置物に関する原状回復義務を貸主は負わず不具合が生じた際には借主が自己負担で修繕しなければならないというような規約を入れておくことによって、貸主はリスクを回避することが可能です。

種類にもよりますが、冷蔵庫やエアコンなどは原状回復のための修繕費が高くなりやすく、そのような残置物に関しては上記で説明したような規約を契約書に入れておくことはとても重要になります。

 

新しい入居者に貸してしまえばその残置物を引き受けたとみなされてしまうとありましたが、新しい入居者に部屋を貸す際の契約書に原状回復義務は入居者が負うという記載を入れておけばリスクを回避できるのですよね?

 

 

そうですね。原状回復については民法など法律で特別規制されているものはないので、契約書において残置物に関しての原状回復義務は借主が負うという記載があり、借主の了承があれば特に問題になることはありません。

 

しかし、のちのトラブルを避けるためにも原状回復の目安などを含めた残置物に関する原状回復義務の詳細をきちんと契約時に説明しておいた方が無難でしょう。

よくある残置物のトラブル

よくある残置物のトラブル

よくある残置物のトラブルとしては、以下のようなものが挙げられます。

エアコン

近年はエアコンが賃貸物件に設備として備え付けられている物件の数も増えてはいますが、中には設備として備え付けられていない物件もあり、借主が自分で取り付けたのち転居の際に撤去し忘れていることがあります。

また撤去する際に撤去費用がかかることから、その費用を免れるためにそのまま放置している場合もあります。

洗濯機

洗濯機まで設備として備えてある物件は珍しく、一般的には自身で購入して賃貸物件に設置することになりますが、転居する際に新しく買い替えるなど不要になった場合に放置されることが多い傾向です。

エアコンの場合と同じく、撤去費用がある程度かかってしまうことから放置していく人が一定程度おり、よくある残置物の事例として挙げられます。

冷蔵庫

冷蔵庫も洗濯機の場合と同じく、転居の際に新しく買い替えるなど不要となった場合に放置されます。持ち運ぶには大きく、また撤去するにも費用がかかるため、そのような面倒ごとを避けるために放置されていくことが多い傾向です。

電子レンジ

電子レンジもよくある残置物の事例として挙げられるものです。サイズは冷蔵庫程大きくなく持ち運びやすくても、電化製品を処分するには専門業者などに引き取ってもらう必要があるため、ある程度の費用がかかってしまいます。

そのような面倒ごとを回避するために頻繁に放置されやすくなっています。

MEMO
上記で挙げたような残置物は前の入居者が所有権を放棄している場合には、備え付けの設備として物件のオーナーが所有権を得ることができます。

まとめ

残置物が発生する原因としては、前の入居者が撤去するための手間や費用がかかるのを惜しんでそのまま放置していくことが根本的な理由であると想定されます。取り外しや新居への移送料金などがかかるため、転居先に持っていくことをためらって放置していくのです。

特にサイズが大きく、取り外しが面倒な家電製品などが頻繁に残置される傾向にあり、場合によってはオーナーにとって悩ましい問題に発展することがあります。

MEMO
前の入居者が残置物を置いていった場合の対処法として、引き受ける意思があれば引き受け、不要であれば連絡を取って対処してもらい、連絡が取れない場合には裁判所に強制執行の申し立てを行う必要があります。

また、引き受ける意思がないにもかかわらず次の入居者に貸してしまった場合は、残置物の所有権を手に入れることになり、原状回復義務についての問題が発生するため注意が必要です。

ただし、入居時の契約の際に残置物について取り決め、契約書にその旨を記載し、入居者がその取り決めに承諾した場合には、入居者に修繕義務が発生します。家賃保証会社との契約書に入れておくことで、残置物処理費用を保証してもらうこともできるので、事前のリスク回避として、検討するようにしましょう。

 

残置物の問題についてしっかりと理解しておけば物件を貸す際にもきちんとした対応ができそうですね。

 

 

そうですね。物件の貸主にとって残置物は有益な場合もあれば、不利益な場合もあるので、残置物に関してはしっかりと理解しておくと効率的な賃貸経営を行えるでしょう。