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旧耐震、築古マンションを購入時に注意すべき7つのポイント。デベロッパーの建築担当者が解説。

近年、あえて築古の旧耐震物件を購入し、自分好みにリフォームする方法が脚光を浴びています。しかし気を付けないと、思い描いていた通りのリフォームが出来ず、築古マンションのメリットを十分に生かしきれないことがあります。そうならないためのチェックポイントを建築的観点から解説します。

 

この記事は旧耐震マンション購入時に気を付けるポイントについての解説です。新築と迷っている方には、下記のような記事もあるので、興味があれば見てみてくださいね。

 
 

旧耐震、築古マンションを購入時に注意すべき7つのポイント

ではさっそく、旧耐震、築古マンションを購入時に注意すべき7つのポイントを見ていきましょう。

【Point1】構造はRC?鉄骨?

 

一般にマンションの構造は、RC造>S造とされることが多いです。

 

建物の構造には木造、RC造(鉄筋コンクリート造)、S造(鉄骨造)などの種類がありますが、マンションでは専ら、RC造が採用されます。一般にRC造は対振動性や防音性に優れ、居住用建物に向いているとされているからです。

S造は今日、一部低層等の賃貸マンションでは採用されることがありますが、分譲ではほぼ見受けられません。しかし、売りに出されている旧耐震世代の古いマンションの中にはS造の物件もちらほら存在しています。

S造は、「工夫すれば大空間を実現できる」、「窓などの開口を大きく取りやすい」といったメリットもあるものの、「音が響く」、「振動が伝わりやすい」等の問題があるので、避けられる傾向があります。これといった狙いがない限りはRC造を選んでおいた方が無難といえるでしょう。

なお、紛らわしいですが、“SRC造”は、RC造とS造の良いところを併せ持つ構造なので、対振動性、遮音性に関してはRC造に準ずるものとなります。

【Point2】旧耐震、新耐震、移行期間とは?

マンションを選んでいると、よく旧耐震や新耐震といった言葉を目にすると思います。これらは、建物の地震に対する強さの最低ラインを定める法律のことで、現行のルールが新耐震、1980年以前の古いルールが旧耐震と呼ばれています。基本的には新耐震の方がよいとされ、どちらの時期に建てられた物件なのかで、市場価格等に影響してきます。

また、あまり知られていないのですが、法律の変わり目の1971年~1980年を「移行期」と呼ぶことがあり、「新耐震」「旧耐震」「移行期」それぞれで、阪神淡路大震災の時の損傷具合に関する壊れ方のデータに差が見られます。

 大破中破小破軽微損傷無し総計
旧耐震期
(~1970)
31棟18棟22棟117棟178棟366棟
移行期
(1971~1980)
42棟49棟158棟647棟915棟1811棟
新耐震期
(1981~)
10棟41棟173棟1224棟1636棟3084棟

出典:東京カンテイ

耐震基準の世代別被災状況

詳しくは、過去の記事の「構造」のところで解説していますので、気になる方は参照してみてください。

【Point3】部屋の中に壊せない壁”耐力壁”はある?

間仕切り壁は撤去して変えられますが、旧耐震物件のように古い物件では、部屋の中に壊せない壁、”耐力壁”がある場合があります。

耐力壁は、建物が地震に耐えるために必要な壁なので、壊すことができません。どの壁が耐力壁なのかは、リフォームで実現可能な間取りに影響を与えるため、購入前に把握しておきたいところです

耐力壁の見つけ方

見つけ方を説明します。販売図面があれば、表記の仕方で分かる場合もあります。現地では耐震壁は一般に通常の間仕切りより分厚いことが多いので、厚さによってあたりをつけることができます。

そして、壁に点検口があるようなら、中を覗いてみることが有効です。コンクリートの壁が出てきたら、その部分は壊せない可能性が高いです。なお、壁に点検口がない場合でも、浴室の天井にある点検口などから見える場合もあります。

注意
不動産仲介業者は、中古物件を紹介する際によく「壁をすべて壊せば広く使えますよ!」というセールストークを使うようです。しかし、家を売りたいあまりに、よく調べてもいないのに安易にこのようなことをいってしまう人もまれにいます。

間仕切りの位置を変更するようなリフォームを検討しているなら、自身でもきちんと確認するようにした方が無難です。

 

私がマンションを購入した時もこのような説明を受けましたが、違和感があったのでよく確認したところ、言っていた壁は取り壊せないことが判明しました。将来の使い方に関わるところだったので、購入後に気づいてショック……。とならなくて本当に良かったです。

 
 

危機一髪でしたね!どのように見破ったんですか?

 
 

通常梁の両端は柱で支えられているんだけど、片方の柱がなかったから、もしかして壁が柱の代わりになっているパターンでは?と思って、たまたま壁に開いていた通気口を覗いてみたら、中にコンクリートの構造体が隠れていたという顛末でした。このような壁は、柱の代わりなので壊せません!

 

【Point4】排水経路にご用心

リフォームでは、大きなキッチンや広々としたユニットバス等、水回りを自分の好きなものに交換出来るのも魅力の一つです。

ただし、後で水回りの位置を変えたい場合は、PS(パイプシャフト)が、どこに何か所あるかを確認しましょう。設置したい場所の近くにPSがないと、水回りを設けることができない場合があります。ポイントは“水勾配”です。

水回りからは当然排水が出ますが、逆流したり詰まったりといったトラブルを防ぐために、少し傾斜をつけて敷設します。この傾斜のことを勾配と呼びます。

勾配を取らなければならない関係上、PSから離れれば離れるほど、床下のふところ(厚み)が必要になり、その分床を上げなければならなくなって、床に段差ができたり、天井高が圧迫されたりすることになります。また、あまりにもPSから遠すぎると、設置自体が困難となる場合もあります。

スラブ下配管のケース

なお、旧耐震物件のように古い建物では、スラブ下配管という方式が採用されていることがあります。今日では排水管は、自分の部屋の床下を通って竪管に接続するのが一般的です。一方スラブ下配管では、床下のコンクリート(スラブ)を突き抜け、下階住戸の天井裏を通って、竪管に接続します。(逆に言うと自分の家の天井裏を、上階の排水管が流れてもいます。)

スラブ下配管のリフォームでは、少し工夫が必要です。

通常の排水であれば、竪管に至る迄の間の排水管はすべて自分の住戸の床下にあるので、床をはがして取っ払い、1からルートを検討の上、新たに敷設することができます。

しかし、スラブ下配管では、基本的に下階へ突き抜けている穴の位置や、天井裏部分の配管は手を付けられませんので、その配管ありきで接続することになり、配管ルートに制約が出ます。

下の階との間のコンクリートに穴を増やしたり、下階天井裏の配管をやり替えるために天井をはがさせてもらったりするのは現実的ではないからです。なので、下階天井裏の部分と穴の位置はそのままにして、そこへうまく接続する必要があります。

MEMO
なお、竪管に新たに接続箇所を増やす許可が出れば、天井裏部分を無視して、床下に新規で配管してしまうという方法もあります。そのような、配管の取り回しについては専門的な内容になってきます。

不安な場合は、購入前からリフォーム業者さんにコンタクトを取っておくのもよいでしょう。間取り図などからどのような水回りの配置ができそうか事前に検討の上、内見に同席してもらって意見を聞けば、どのようなリフォームができるのか見当をつけることができます。

【Point5】階高は何m?

 リフォームで素敵な広々空間を作ろう。そう想像したときに忘れがちなのが、天井の高さです。せっかく広いスペースを設けても、思ったより天井が低い!なんてことになっては、息苦しい思いをすることになってしまいます。そうならないためにも、事前にワンフロア―あたりの高さ、階高をザックリ確認しておきましょう。

天井には照明の配線や換気ダクトが、床下には給水管や排水管が通っているので、とれる天井高は単純計算で、「階高-(床下のふところ+天井のふところ)」となります。

このうち、床下や天井のふところは、配管ルートの検討などにより、ある程度コントロール可能なのですが、階高は建物自体のつくりの問題なので変えることができません。

 また、前述のスラブ下配管で機器の位置を変えたい場合など、一般にその場所の床を部分的に高くする必要が出てくる傾向にありますので、そのことも勘案の上、自分が満足できる階高かどうかを一度考える必要があります。

【Point6】リフォームの実績を聞くべし!

 

組合が厳しいと満足にリフォームできないことも。

 

マンションによっては、組合の規約でリフォームに制限がかけられている場合がありますので、事前に確認するようにしましょう。

管理規約を見れば、リフォームが禁止されているかどうか、申請が必要かどうかや、組合による審査の有無がわかります。ただし、組合の審査がどの程度厳しいのかまでは書いてありませんので、物件を紹介してくれる不動産屋さんから情報を得る必要があります。

リフォームに厳しいマンションは噂になりやすいので、ある程度そのエリアに慣れている担当者であれば、情報を知っているかもしれません。不動産屋さんから、今の持ち主や管理人さんに聞いてもらうのも手です。

また、過去リフォームがあったという手がかりを、自身で見つけてみるのもよいでしょう。下記のような手がかりがあります。

・今検討している住戸に、明らかにリフォームされている個所がある

→リフォーム実績あり

・同じマンションの過去の売り出し状況を見て、フルリノベ済みの住戸が売り出されている

→リフォーム実績あり

・建物のインターフォンが住戸によってバラバラ

→少なくとも、インターフォンを各自で交換することは許されている

・外壁を見たときに、排気口が増設されていたり、移設されていたりする

→内部の間取りが変わったのでは?

【Point7】設備等の更新状況

 

マンションは戸建てと違って、自由にリフォームできない個所があります。

 

マンションは建物の一部をみんなで共有しています。部屋の外側を、組合の承認なしに勝手にいじることは原則できません。なので、こういった部分に関しては、修繕の記録から、状況を確認してくことをお勧めします。修繕の記録は、重要事項調査報告書というものに載っています。この書類は、仲介業者さんに「ください」といえばもらうことができます。

MEMO
修繕の記録を見ると、色々な事柄が記載されていますが、最低限確認することをお勧めするのが、給排水設備の更新状況と、インターネット配線の整備状況です。

給排水設備に関しては、単純に給水管が新しい方が気持ちが良いというのが一つ。また、古い物件だとたまに設備の更新が困難な物件があるのですが、「交換」などと書かれている物件は更新の実績があるという点で、メンテナンスが可能なつくりになっているということが確認できるという意味もあります。

インターネットに関しては、部屋が対応しているかどうかというよりも、建物全体として線を引き込んでいるかの確認になります。組合で工事して、建物自体への引き込みがきちんとされていれば、道路から部屋まで線を持ってくる必要がなくて済みます。

 

最近はほとんどのマンションが対応しているので基本的には大丈夫なのですが、念のため確認しておきましょう。

 

また、これはどちらかというと現地に行ったときに確認する事項なのですが、玄関ドアや窓も共用部分となりますので、デザインや防音性など、許容範囲内かどうか確認しておくことをお勧めします。

なお、窓に関してはどうしても性能を強化したい場合、二重窓という手段があります。

■まとめ

いかがでしたか?ここまで、築古、旧耐震物件購入に関するいろいろな“チェックポイント”を見てきました。ポイントの中には「別にそんなことは気にしないよ」という項目もあったかと思いますが、それはそれで“良し”です。

中古マンションに“珠に傷”は付き物。全てが完璧な中古物件はほとんどないか、あっても超高額です。大切なのは自身にとって譲れないポイント、許容できるポイントが何かを把握することだと思います。

そのうえで致命傷をうまく回避して、それぞれに合った築古マンションを選ぶことができれば、ワンランク上の暮らしを、賢くお値打ち価格で手に入れることが出来るかもしれません。

 

多くの人が嫌がる要素でも、リスクを把握したうえで「自分が気にならなければ無問題」ともいえます。不動産に関する情報はあふれているので、それらの内容を理解するのは大切なことですが、自分が本当に何を求めているのかを忘れて踊らされないようにしましょう。