マンション建て替えの年数や費用を徹底検証。デベロッパーの建築担当者が解説。

マンションの建て替えは今後増えていくことが予想されます。マンションという形態の住居が出来て半世紀以上が経過し、「古くなったマンション」の数が単純に増え続けていくからです。どんなに新しい建物も、いつかは古くなるもの。新築マンションに住んでいる貴方や、これから購入を考えている貴方も無関係ではありません。

 

この記事では、マンションの建て替えにかかるコストや、建て替えを考える年数、建て替えの時に知っておきたい注意点をお伝えします。

 
国土交通省「老朽化マンションの建て替え等の現状について」
マンションの建て替えをまとめると...
  • 今後、老朽化マンションは増えるので建て替えが必要な物件は増える傾向
  • マンションの建て替えにかかるコストは1000万~2000万ほど
  • マンションの建て替えは築30年〜40年が目安になる

マンション建て替えの年数

マンションは築何年くらいで建て替えられるの?

建替えられたマンションの過去事例をみると、「築30年~40年」での建て替えがボリュームゾーンとなっているようです。ですが、今あるマンションの中には築60年以上の物件も数多く存在しています。

建て替えをして採算が取れやすい物件は比較的早期に建て替えが実現し、そうでない物件はいつまでたっても建て替えがされないまま今日に至っている。というところで差がついているのではないでしょうか。

マンションの建て替えにはどれくらいの期間がかかるの?

 

建て替えには、非常に長い時間がかかります。

 

建て替えが成し遂げられ、新しい建物が竣工を迎えるまでには、非常に多くの人が関わるので、意見を集めて調整する過程で非常に長い年月を必要とします。

まず建て替えのためには少なくても区分所有者の2/3の同意が必要です。同意までの間には、修繕でしのいだ場合との間で経済合理性を比較したり、反対派の居住者を説得したりといったことが行われます。建て替えが検討されるようなマンションは入居から年月が経っており、高齢の方も多い傾向にあります。そのため、年齢故建て替えに消極的な方も多い場合があります。

また計画を決める段階では、事業化をするコンサル会社や一部の部屋を買い取るディベロッパー、設計士などがかかわってきます。例えばデザインだけを例にとっても区分所有者内部ですら好みがわかれるほか、デベロッパーも広告映えさせたいなどの思惑があり、そこに法律上の制約等もかかわってきて、すべてを丸く収めるまでには途方もない調整が必要となります。

実際の話ですが
これは昔建て替えマンションの見学に行った際に伺ったお話ですが、ある区分所有者の方は、お父様の代から話し合いを始めて、完成していた時には息子様にバトンタッチしていたそうです。お父様は間際に亡くなってしまったとのことで、その方は、お父様にも見せてあげたかったと涙ながらに語っていたということでした。

マンション建て替えのコスト

マンションの建て替えには概ねどれくらいかかるのか

気になる建て替えにかかる費用についてです。まず建て替えにかかる費用は建物は組合の共有財産なので、組合の負担となります。そして一般には下記の方法などで賄われます。

建替え費用の集め方
  1. 積み立てている組合費、修繕費からの拠出
  2. 建て替えに伴いマンションの区分所有者から集める形
  3. 金融機関から管理組合が借入をする

なお、建て替えにかかる額は、掛かる解体・建築費や補助金等の与条件によって全く変わってくるので、一概には言えません。

後述する仕組みによって負担が減る事例もあるものの、そうではない場合は通常のマンションの建設費を鑑みるに、建設費だけで1住戸当たり1000万~2000万は覚悟しておいた方がよいといえます。

 

掛るのは建設費だけではありません。場合によりますが設計料や、仮住まいの賃料、引っ越し代金等もかかってきます。

 
 

建物が新しくなるのはうれしいけど、やっぱりお金の心配はついて回るんですね。早くその、「負担が減る仕組み」を教えてください……。

 

マンション建て替えの負担を軽減する保留床とは

区分所有者の負担を減らすことのできる方法。その方法の一つがズバリ、“保留床”を作り売却することです。

建て替えでは新しくできた建物の住戸を各権利者に分配します。その時に住戸を多めに作って売却し、得た資金を建て替えにかかる費用に充てることで居住者の負担を軽減するというスキームがよく採用されます。

この時に既存の入居者に分配されなかった(=よその人に売った)“床”を保留床と呼びます。

MEMO
保留床をたくさん作ることができるほど、区分所有者の負担を極端に言うとゼロに近づけることができるというわけです。

注意!こんなマンションは建て替えコストがかさみます

逆にコストがアップしてしまう要因もあります。一般に敷地の条件によって工事費は変わりますが、これがあまりに高額となると、採算が合わず建て替えが困難になるケースもあります。

旗竿敷地

奥が広く手前が極端に狭い敷地だと、規模の大きい工事に対して十分な大きさの重機を入れることが困難になり、効率が悪くなります。

わかりやすく例えるなら、2tトラックで土砂を運び出さなければ間に合わないような大工事なのに、軽トラでのピストン輸送をしていたらコストがかさみそうだということがお分かりいただけるかと思います。

狭い道沿い

杭の施工時に杭に用いる「鉄筋かご」を運んできます。杭はとても長いので、長い車で運んでくるのですが、敷地までの道が短いと、その車が曲がることができず、杭の工法の変更を強いられる場合があり、コストがかさむ要因となります。

傾斜地

重機や資材をクレーンで降ろしたり仮のスロープを作るような費用が掛かったり、山留の費用がかさむ傾向にあります。

マンション建て替えにあたり知っておきたい注意点

建て替えで作れる床面積には限度があります。

先程、費用面での負担軽減のために“保留床”が有効と書きました。ただ、注意点があります。

敷地により、作れる床面積には限度が設けられており、それを超えて建築することはできません。何も考えず保留床をどんどん作れるとは限らないのです。

すでに建っている建物の延べ面積が一杯一杯の場合、少しずつ専有面積を減らしてかき集め、保留床に充てる方法がとられることがあります。

注意
一つ一つの住戸は狭くなってしまいますので、建物が新しくなることによる資産価値の向上と天秤にかけることになります。

地区計画道路によって建て替え後の面積が減る場合があります。

床面積の上限は、一般に敷地の広さに比例して大きくなります。敷地内に計画道路が通って敷地が削られた場合、その分敷地面積が減り、床面積の上限が減るので注意が必要です。

逆に床面積が増える場合もあります

今の法律では、共同住宅は緩和措置があり、共用廊下やエレベーターシャフト等の面積は、建てられる床面積の計算上上限ノーカウントにできます。これらの緩和がされる前に建てられたマンションを建て替える際は、この緩和を適用できる分、一般に面積を増やすことができます。

 

床面積、増えたらいいけど減ったら嫌ですね……。

 

 

そうだね。だからこそ、企画の段階で専門家の意見を交えて検証するのがおすすめです。

 

まとめ

ここまで、建て替えにかかる時間や費用、注意点についてみてきました。

今マンションに住んでいる方は、ご自身の物件の状況と照らし合わせて、もし建て替えをするなら。という観点でこの記事を読み返してみると良いかもしれません。

また、これから購入を考えている方は、建て替えに有利な物件かどうかを判断材料の一つとして検討してみるのはいかがでしょうか。