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マンション大規模修繕とは?費用相場や内容とよくあるトラブルについて

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

この記事のざっくりしたポイント
  1. 大規模修繕工事はマンション住環境や資産価値の向上のために重要なイベントの一つ
  2. マンション大規模修繕費用は定期的(13年~16年ごと)に行われるマンション大規模修繕工事に要する費用のこと
  3. マンション大規模修繕費用にはコンサル費用もかかる

マンションは平均して13年~16年ごとに大規模修繕工事の時期がきます。大規模修繕工事はマンション住環境や資産価値の向上のために重要なイベントの一つです。しかし「工事費用はいくらなのか?」「工事期間はどれ位かかるのか?」など疑問に感じておられる方はいませんか?実は概ねマンション戸数により、決まってくることがわかります。

住宅に関する多くの相談事や悩み事を解決してきた不動産コンサルタントがマンション大規模修繕費用の概要や要する費用、必要になる時期、工事の流れとスケジュール、よくあるトラブルについて解説します。大規模修繕工事をスムーズに進捗させるには準備を早めに開始し、管理組合が積極的に関わることが大切であることを理解できます。

マンション大規模修繕費用とは

マンション大規模修繕費用は定期的(13年~16年ごと)に行われるマンション大規模修繕工事に要する費用のことです。

マンション大規模修繕費用が必要な理由

マンションの住環境や資産価値の向上などを理由として大規模修繕費用が必要になります。建物は年月が経過しますと様々な箇所において、劣化・損傷・汚れが表れます。建物本体の外観だけでなく内部においても経年と共に傷みなどが表面化します。また上下水道や電気・ガス設備(共用部分)などの機能面についても同様に傷みが出てきます。

さらに劣化・損傷個所を放置し続けますと、外壁のタイルが剥がれ落ちて直下を通行する歩行者や車などに衝突し、事故を起こす危険性もあります。安心・安全に生活を送ることが難しくなるだけでなく、マンションの資産価値の低下にも繋がる事態となり得ます。その様にならないためにも以下などを図ることが必要になります。

マンション大規模修繕費用が必要な理由
  • 建物本体の劣化・損傷個所の修繕工事
  • 上下水道や電気・ガス・通信・警備設備(共用部分)などの修繕工事もしくはグレードアップ

マンションは複数の世帯が暮らしており、建物規模も大きくなるため、劣化・損傷箇所が生じるたびに補修を行うことは不効率となります。修繕工事資金を計画的に集金し建物全体をまとめて定期的(13年~16年ごと)に実施する方が、効率的で工事資金も安価にて済ますことができます。大規模修繕工事はマンション開発業者などが作成した長期修繕計画に則って実施されるのが一般的となります。

大規模修繕工事を実施する主な箇所

大規模修繕工事の対象となる箇所は主に共用部分といわれる外壁・屋根・バルコニー・共用廊下・階段・エントランス・エレベーター・給排水管・ガス管などです。

主な修繕箇所 修繕内容
外壁 ・塗装の場合は塗り直し
・タイル張りの場合はタイルの張り直しやシーリング(防水)を実施
屋根・バルコニー共用廊下・階段 ・主に雨水に対する防水補修工事
・塗装部分は塗り直し
エントランスエレベーター ・自動ドアなどの点検・補修・部品交換など
・エレベーター設備の点検・補修・部品交換など
給排水管・ガス管 ・劣化・損傷の程度により、管の補修、撤去・交換工事など

マンション大規模修繕にかかる費用

国土交通省が公表した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によりますと戸当たりの大規模修繕費は、下表の通りです。

大規模修繕工事回数 戸当たり工事金額
下位25% 中央値 上位25% 平均
1回目 73.5万円/戸 98.7万円/戸 117.9万円/戸 100.0万円/戸
2回目 76.2万円/戸 95.6万円/戸 119.8万円/戸 97.9万円/戸
3回目以上 55.1万円/戸 77.3万円/戸 105.7万円/戸 80.9万円/戸

出所:国土交通省

1回目の大規模修繕費は戸当たり平均:100万円となります。

例えば、以下の大規模修繕費が掛かります。

大規模修繕費
  • 30戸のマンションの場合:3,000万円前後
  • 100戸のマンションの場合:1億円前後

同様に延床面積当たりの大規模修繕費は下表の通りです。

大規模修繕工事回数 ㎡当たり工事金額
下位25% 中央値 上位25% 平均
1回目 8,483.7円/㎡ 10,647.9円/㎡ 13,426.4円/㎡ 13,095.9円/㎡
2回目 9,144.7円/㎡ 11,752.4円/㎡ 15,538.8円/㎡ 14,634.9円/㎡
3回目以上 7,530.8円/㎡ 10,626.4円/㎡ 13,523.3円/㎡ 11,931.0円/㎡

出所:国土交通省

1回目の大規模修繕費は、㎡当たり平均:13,095.9円/㎡となります。

例えば以下の大規模修繕費が掛かります。

大規模修繕費
  • 延床面積:3,000㎡のマンションの場合:約3,930万円
  • 延床面積:10,000㎡のマンションの場合:約1億3,000万円

マンション大規模修繕費用にはコンサル費用もかかる

マンション大規模修繕費用には事前準備・ノウハウ提供のためにコンサルタントへの報酬が発生する場合もあります。マンション大規模修繕工事に伴い、住環境や資産価値の向上を達成するために以下などを外部の設計コンサルタントに委託する場合があります。

部の設計コンサルタントに委託する内容
  • 劣化・損傷などの事前調査
  • 補修・資産価値向上の設計
  • 施工会社選定へのアドバイス
  • 工事監理

その他の理由として管理会社に大規模修繕工事を任せますと、傘下の施工会社に発注して3割~4割もの工事費用を中抜きするケースが少なからずあります。それを防止するために客観的な立場で大規模修繕工事を進捗させるポジションが必要になるため、設計コンサルタントを採用する場合もあります。コンサルタント費用はマンション規模や委託する業務内容により異なります。目安として以下の通りです。

ンサルタント費用
  • 数十戸の中小マンションの場合 :数百万円
  • 数百戸の大規模マンションの場合:1,000万円以上

修繕費は修繕積立金で賄う

大規模修繕費用はマンション区分所有者が毎月管理組合に対して支払う修繕積立金により、賄われます。マンションを購入しますと毎月管理費と修繕積立金を管理組合に対して支払う義務が発生します。それぞれの主な使用用途は、下表の通りです。

  主な使用用途
管理費 ・共用部分であるエントランス・廊下・階段などの清掃・貯水槽・給排水管などのメンテナンス
・管理会社への委託費用(管理人報酬)
修繕積立金 定期的(13年~16年)に行う大規模修繕工事費用への積立金

国土交通省が公表した「平成30年度マンション総合調査結果」によりますと、月/戸当たりの修繕積立金は、下表の通りです。

  マンション形態 平均
単棟型 団地型
駐車場使用料等からの充当額を含む 11,875円 14,094円 12,268円
駐車場使用料等からの充当額を除く 11,060円 12,152円 11,243円

出所:国土交通省

修繕費は劣化具合で高くなることもある

大規模修繕費は築年数による劣化具合により高くなる場合があります。第1回目の大規模修繕工事の際、外壁・屋根などの建物本体や廊下・階段・エントランスなどの共用部分の劣化・損傷は、軽微な状態であることが多く、修繕費を抑えることができる場合もあります。しかし第2回・第3回目の大規模修繕工事の際、築年数が30年以上になりますと、建物本体や共用部分の劣化・損傷が酷くなり想定した修繕費よりも高くなる場合もあります。

MEMO
日常のメンテナンスがしっかりと成されていれば傷み具合も軽くなり、修繕費は安くなります。日頃のメンテナンスを放置しますと傷み具合が酷くなり、修繕費は高くなります。建物状況により修繕費は大きく違ってきます。

マンション大規模修繕が必要になる時期

国土交通省が公表した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によりますと大規模修繕工事回数と築年数の関係は下表の通りです。

大規模修繕工事回数 築年数
下位25% 中央値 上位25% 平均
1回目 13.0 14.0 16.0 16.3
2回目 26.0 28.0 33.0 29.5
3回目以上 37.0 40.0 45.0 40.7

出所:国土交通省

マンション大規模修繕と購入・売却の関係について

大規模修繕工事前後の購入者と売却者の立場を下表にまとめます。

  購入者 売却者
大規模修繕工事前 ・購入価格を値引きにより安く設定
・大規模修繕工事を購入直後に控える
・売却価格を値引きされる可能性大
大規模修繕工事後 ・修繕され綺麗
・しばらく大規模修繕工事は無い
・購入価格は高い
・売却価格を高く設定可能

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マンション大規模修繕工事の流れとスケジュール

 

マンション大規模修繕工事を進めていく上で、注意点は何ですか?

 
 

区分所有者間での協議を進めていく途上で意見がまとまらず難航することも考えられますので、その分も見越して、準備は早めに始めた方が良いです。

 

>大規模修繕着工までにすること

大規模修繕工事を検討するにあたり管理組合が先ず行うことは以下の通りです。

大規模修繕工事を検討するにあたり管理組合が先ず行うこと
  • 理事会を開催し、修繕専門委員会を設立
  • 総会を開催し、大規模修繕の準備開始ならびに修繕専門委員会の承認

区分所有者を中心とした修繕専門委員会を発足・運営開始することにより、大規模修繕工事の準備を始めることができます。準備開始から大規模修繕工事の開始まで概ね2年ほど要するのが一般的です。大規模修繕方式には以下があります。

大規模修繕方式
  • 設計監理方式:設計コンサルタントなどに委託し、設計・工事監理などを依頼
  • 2責任施工方式:管理会社や施工会社に設計・施工までを委託

修繕専門委員会において候補として挙げたパートナーになる会社を選択する際、管理組合内で意見調整が取れず、無駄に時間が経過する場合もあります。そうなることを想定し早めに準備を開始することが大切です。大規模修繕工事までに管理組合が決めなければならない項目は以下の通りです。

大規模修繕工事までに管理組合が決めなければならない項目
  • パートナー会社(設計コンサルタント、管理会社など)の選択
  • 施工会社の選択
  • 見積調査・精査
  • 理事会・総会での施工会社の決定
  • 工事請負契約の締結
  • 区分所有者・住民への説明会開催

 

完了までの期間と管理組合がすること

大規模修繕工事が開始すれば管理組合は定例会議を毎月少なくとも1回は開催する必要があります。大規模修繕工事期間と定例会議開催回数の目安は下表の通りです。

マンション戸数 大規模修繕工事期間 定例会議開催回数
30戸前後 約3か月 4回
50戸前後 約4か月 5回
100戸前後 約6か月 7回

大規模修繕工事期間が約3か月を要する場合、工事着手時・1か月後・2か月後・工事完了時と4回にわたり開催するイメージとなります。定例会議の場において工事監理会社や施工会社から工事の進捗状況や補修状況などの報告を受け、内容の吟味や改善すべき点などを協議します。場合によっては追加費用が発生するケースも出てくる可能性があり、多額になりますと、理事会・総会に諮る必要性が生じます。

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1年目は準備段階

1年目は大規模修繕工事の準備段階となり管理組合が行うべき項目は下記の通りです。

管理組合が行うべき項目
  1. 大規模修繕工事の検討開始
  2. 修繕専門委員会の設置
  3. 設計コンサルタントへの委託検討
  4. 総会において、大規模修繕工事実施ならびに修繕専門委員会の承認

2年目は設計実施段階

管理組合が行うべき項目
  1. 大規模修繕コンサルティング業務委託契約締結
  2. 建物診断調査の開始
  3. 施工会社の候補を数社選定 → 大規模修繕工事見積書の吟味・精査
  4. 施工会社の決定(理事会決議)
  5. 総会において、設計・大規模修繕工事内容の承認、施工会社の承認

3年目は工事実施段階

管理組合が行うべき項目
  1. 大規模修繕工事着工
  2. 定例会議開催(毎月1回):進捗状況・修繕状況・問題点・変更点などの確認
  3. 工事完了

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マンション大規模修繕工事でよくあるトラブル

 

大規模修繕工事において、よくあるトラブルは何ですか?

 
 

修繕専門委員会などで話がまとまらないケースがよくあります。専門知識・経験のあるコンサルタントを入れることにより、スムーズに流れる可能性が高まります。

 

大規模修繕まで残り半年〜1年では間に合わない

大規模修繕工事に対する場合、以下などの手順を踏む必要があるため半年~1年では、とても間に合いません。

  1. 設計コンサルタントなどのパートナーの選定
  2. 施工会社の選定
  3. 建物診断調査・補修設計
  4. 施工会社選定
  5. 理事会・総会での承認・決済

長期修繕計画に基づく大規模修繕工事の約2年前になりますと通常は管理会社から管理組合に対して、準備を始める時期である旨のアドバイスを行います。しかし、つい先送りにしてしまいがちになり、気が付けば半年~1年後に迫っている状況はよくあります。

ここでよくあるケースですが管理会社から「全て任せてもらえますと今からでも間に合います」という助言がなされますが、鵜呑みにしないことが大切です。上記でも触れましたが管理会社傘下の施工会社に発注し、工事費の3割~4割を中抜きする可能性があります。また工事内容・費用が不透明な状態で工事を進める可能性があり、後日トラブルになるケースも少なからずあります。

注意
長期修繕計画において設定された大規模修繕工事時期に間に合わない場合、1~2年ずれても影響はありませんので、焦って発注しないことが重要です。

コンサルティング会社を入れないと修繕専門委員会で話がまとまらない

大規模修繕工事の2年前あたりから修繕専門委員会を設置して準備を開始するケースが比較的多くなります。その際、大規模修繕方式を設計監理方式にするか責任施工方式にするか選択する際、意見調整できず揉めることも少なからずあります。その場合、大規模修繕工事に詳しい建築士や設計コンサルタントなどの第三者に入ってもらうことにより、意見調整を図りまとめてもらうのも方法の一つです。

MEMO
日頃からアドバイザーとして相談先を確保しておきますと、問題が生じた際にスムーズに解決することができます。

 

追加費用や仕上がりトラブルなどは進捗をしっかり確認する

工事中に修繕箇所が設計・計画時よりも多くなる場合や損傷が思いのほか酷くて追加費用が生じるケースもあります。また設計や工事のミスで仕上がりに食い違いが生じ、トラブルになるケースもあります。その場合、管理組合は毎月開催される定例会議において、状況を確認・把握し、責任所在の追求や今後の作業の意思決定など積極的に関わることが重要になります。

まとめ

以上、マンション大規模修繕費用の概要や要する費用、必要になる時期、工事の流れとスケジュール、よくあるトラブルについて解説しました。大規模修繕工事を成功に導くためには以下などが必要となります。

大規模修繕工事を成功に導くために
  • 早い段階での準備開始
  • 区分所有者間や管理会社、パートナー会社とのコミュニケーションの充実
  • 管理組合の積極的な関与

関係者間の協議の充実度合いがスケジュールの進捗や最適なパートナー選考において影響します。大規模修繕工事をスケジュール通りに品質良く安価に仕上げるためにも、積極的に管理組合や協議の場に参画されることをおすすめいたします。