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古い家の築年数は40年?上手に売却するコツと処分・活用方法、リスクについて解説

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

この記事のざっくりしたポイント
  1. 築20年が「古い家」の一つの目安
  2. 余計な手を加えず余計な経費をかけずに売却する方法がベター
  3. 先ずは不動産一括査定サイトなどを利用することがおすすめ

親から相続した古い家など処分するのに困っている人は多数います。特に築40年にもなると建物も設備・器具もボロボロな状態になっていることが多く途方にくれます。しかし築古の家を上手に売却するコツがあります。余計な手を加えずに売却することがポイントとなります。

多くの住宅売却に携わった不動産コンサルタントが古い家を上手に売却するコツや処分・活用方法・リスクについて解説します。余計な経費をかけずに効率よく古い家を売却されることをお勧めいたします。

古い家とは?定義や築年数について

 

古い家は、築年数によって決まっているのですか?

 
 

特に定められていることはありません。ただし目安となるものはありますので、解説します。

 

古い家の定義は築20年以上、築40年は資産価値がほぼゼロ

「古い家」の明確な定義はありません。一つの目安として国税庁が建築構造・用途別に規定する法定耐用年数があります。住宅の場合には、建築構造ごとに下表の通り規定されています。

建築構造別の法定耐用年数(出所:国税庁)

税務上の建物評価は上表の法定耐用年数を経過すると無くなります。特に木造や軽量鉄骨造(鋼材厚:3mm以下)の場合、築年数が20年前後で、税務上の評価は無くなるため、築20年が「古い家」の一つの目安と考えられます。

出典:「耐用年数(建物/建物付属設備)」 国税庁

古い家の定義は築年数だけでなく耐震基準も参考になる

古い家の基準を考慮する場合、耐震基準も一つの目安となります。特に耐震基準において取り上げられるのが旧耐震基準と新耐震基準です。

旧耐震基準

旧耐震基準は1950年に建築基準法が制定された当時の耐震基準です。震度5程度の中規模の地震に耐えられることを基準としています。

新耐震基準

新耐震基準は1978年の宮城県沖地震(宮城県内:死者27人、建物の全半壊7,500戸)を教訓として、1981年を基準として見直しがされました。震度5程度の中規模の地震に対してはほとんど損傷を生じさせません。

稀にしか発生しない大規模地震(震度6強から震度7程度)に対して人命に危害を及ぼすような倒壊などの被害を生じさせないことを基準としています。

旧耐震基準と新耐震基準の見分け方

旧耐震基準と新耐震基準の見分け方の判断は建物が完成した年ではありません。1981年5月31日以前の建築確認済証の交付日であれば旧耐震基準の建物です。1981年6月1日以降の建築確認済証の交付日であれば、新耐震基準の建物です。

例えば1982年に完成した建物であっても建築確認済証の交付日が1981年5月31日であれば、旧耐震基準の建物となります。 2020年時点で新耐震基準の建物は最も古い建物で築約40年となります。築40年が古い家として考える最も長い築年数と考えられます。

古い家を売却する際に勘違いされがちなこと

 

古い家を売却する場合、勘違いされがちなことはありますか?

 
 

案外勘違いをして思い込みをしている人が多いです。地方で古い家は売れない、リフォームした方が高く売れる、古い家は解体して更地にした方が売りやすい、などです。

 

地方で古い家は売れない → 都心・田舎関係なく売れる可能性がある

地方で古い家は売れないと思い込んでいる人は案外多くいます。しかし、古い家でも都心・田舎関係なく売れる可能性があります。UターンやIターンと呼ばれ、都心での生活に見切りをつけ田舎での生活に活路を求める人が増加する傾向にあります。

MEMO
その様な人たちにとって、地方での古い家は「渡りに船」となる可能性を秘めています。不動産一括査定サイトなどを通して物件登録をしますと、案外購入者が早く決まる可能性が高くなります。

リフォームした方が高く売れる → 必ずしもそうではない

リフォームしたからといって、その費用を上乗せして売却しようとしても売却できるとは限りません。売却できずに長期間を要してしまい、結局値下げをして売却せざるを得ずマイナスとなる場合もあります。

購入者の中にはセルフリフォームを目的として古い家を探している人もいますので、リフォームせずに現状にて売却する方が良策といえます。

家が古いなら更地にした方が良い → 費用がかかるためお勧めしません。

古い家を解体して更地にすることも考えられますがリフォーム同様に、その費用を上乗せして土地を売却できるとは限りません。建築構造によっては解体費用が高くなりますし、様々な不具合が生じる可能性があります。詳しくは後記にしますが様々な条件を加味し比較することが大切です。

ちなみに建築構造による解体費用の目安を下表にまとめます。

建築構造 解体坪単価
木造(W造)・軽量鉄骨造(S造) 4万円~5万円
重量鉄骨造(S造) 6万円~7万円
鉄筋コンクリート造(RC造) 6万円~8万円

古い家を売却する際のリスクやデメリットについて

 

古い家を売却する場合、リスクやデメリットは何ですか

 
 

売却できるまでの維持費や水道管などの交換、増改築が不可能、隣地との境界などがあります。

 

売れるまで固定資産税や光熱費などの維持費がかかる

固定資産税・都市計画税は毎年1月1日時点での不動産所有者に対して課税される市区町村税です。所有している限り納税する必要があります。水道光熱費は解約手続きを取れば費用は発生しませんが解約手続きを取らない限り基本料金は最低限発生します。

また庭などでは雑草が生え定期的に処理する必要があります。自身で処理を行えばお金はかかりませんが、高木など業者に依頼するとなると決して安くはない費用が発生します。

古い家の売却は水道管の交換が必要になることも

古い家に引かれている水道管の中には口径が13mmの場合もあります。現代の生活スタイルは浴室や洗面での水の使用量が増加する傾向にある中、口径が20mmの水道管が引かれているのが一般的です。口径が13mmだと、売却する場合に購入者から敬遠されるか水道管を20mmに交換することを要望される可能性があります。

注意
また水道管の中が長年の使用により錆で詰まり劣化・損傷している場合もあります。その場合には必然的に水道管の交換を行わないと、売却できなくなるか売却できても後日トラブルの元になります。

建築基準法の容積率と建蔽率により増改築が不可能のケースもある

建築基準法の改正により用途地域の細分化による建蔽率や容積率の見直しが行われ、立地によっては増改築が不可能になる場合もあります。建蔽率は敷地面積に対する建築面積の割合です。建築面積は建物を上から見た時の面積です。建蔽率は下記式で計算されます。

建蔽率(%)= 建築面積(㎡)÷ 敷地面積(㎡)× 100

容積率は敷地面積に対する延床面積の割合です。延床面積は各階の床面積を合計した面積です。容積率は下記式で計算されます。

  容積率(%)= 延床面積(㎡)÷ 敷地面積(㎡)× 100

建蔽率は平面的な広さを制限するものですが容積率は立体的な空間を制限するものとなります。

例えば古い家の建築当時の立地が低層住居専用地域といわれる用途地域内にあったとします。建築基準法の改正により低層住居専用地域は第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域の2種類に細分化されました。

それにより建築当初の建蔽率:50%、容積率:100%であった規定が、建蔽率:40%、容積率:80%の規定になる立地が出てきました。古い家が建蔽率50%、容積率100%の制限いっぱいで建てたとしますと建築基準法改正後の規定にそぐわなくなり「既存不適格」となります。

増改築する場合には建築当初の建物の大きさを確保できなくなり、増築するどころか規模縮小せざるを得なくなり古い家と同等規模の「再建築不可」となります。

注意
したがって古い家を売却する場合には「既存不適格」「再建築不可」と表示せざるを得なくなります。

隣人とのトラブルでよくある土地の境界が曖昧

古い家の場合、隣地との境界に境界鋲や境界石などが無く曖昧になっていることが多々あり、隣地とトラブルになることがよくあります。特に古い家を売却する場合、購入者は後々隣地と揉めたくないので、売却者に対して隣地との境界明示を求めます

通常は境界明示を行う場合、土地家屋調査士に依頼して隣地所有者と協議をしながら決めることになります。その場合、隣地所有者との関係が良好であるとスムースに境界明示ができる可能性が高まります。

注意
しかし隣地所有者との関係が険悪であると協議してもなかなか双方が合意に至らずトラブルとなり、長期間に及ぶ場合もあります。

古い家は古家付き土地で売却するのがおすすめ!

 

古い家は中古住宅として売却するのではなく、古家付き土地として売却する方が良いのですか?

 
 

どちらもメリット・デメリットがあります。築年数にもよりますが、古家付き土地として売却した方が良策といえます。

 

古家付き土地で売却するメリット

古家付き土地で売却するメリットとしては固定資産税やリフォーム・解体費が不要、瑕疵担保責任を問われなくなるなどが挙げられます。

固定資産税・都市計画税

解体費と固定資産税・都市計画税の合計額とを天秤にかけて判断する必要があります。古い家が建っている場合、何も建物が建っていない更地の状態より固定資産税・都市計画税が減税される規定があります。

固定資産税・都市計画税の減税率(土地)

固定資産税の場合、敷地面積が200㎡までの部分は1/6となり、200㎡を超える部分は1/3に減税されます。ただし古い家が建っていると、建物にも固定資産税がかかります。したがって、

古い家を解体後の更地の固定資産税 > 敷地+古い家の固定資産税

であれば古い家を残した方が固定資産税の観点からは有利となりますが、

古い家を解体後の更地の固定資産税 < 敷地+古い家の固定資産税

であれば古い家を解体した方が固定資産税の観点からは不利となります。

MEMO
しかし一般的には古い家を残した方が有利になることが多いです。

リフォーム・解体費が不要

古家付き土地で売却すると事前の処理(リフォーム・解体費)が不要となり、経費をかけなくて済みます。

瑕疵担保責任

古家付き土地で売却すると瑕疵担保責任を免れることができます。しかし中古住宅として売却すると瑕疵担保責任が生じます。その分、設備・器具の不具合や瑕疵による責任を問われるリスクを負うことになります。

古家付き土地で売却するデメリット

古家付き土地で売却するデメリットは売却価格を中古住宅や更地の場合よりも安く設定する必要があります。購入者にリフォームや解体費用を負担させることになるからです。しかし売却期間を短く設定したいのであれば、売却価格を安く設定することが効果を発揮するため、必ずしもデメリットだけではなくなります。

注意
また上記において説明しましたが建築基準法上の問題により、古い家によっては「既存不適格」や「再建築不可」の表示の義務が伴います。

古い家を売却するときのコツ

 

古い家を売却するときのコツは何ですか?

 
 

売却価格を相場よりも500万円前後値下げしてみたり、不動産一括査定サイトを利用することです。

 

売却価格を相場よりも500万円前後値下げする

上記でも説明しましたが初めから購入者が負担を強いられることになるリフォーム費用や解体費用などを見込んで、売却価格を相場よりも500万円前後値下げしておくことも考えられます。そうするとお値打ち感も出せますので早期売却に繋がる可能性も高くなります。

不動産一括査定サイトを利用する

古い家を売却する一つの手段として不動産一括査定サイトを利用するのも良策です。仲介を依頼する不動産会社の情報収集や依頼する不動産会社の選択、不動産会社から出てくる査定価格の比較などがスピーディーに無料で行えるからです。

他の方法で売却する方法と知っておきたい古い家の処分について

 

他の方法で売却する方法や古い家の処分について教えてください。

 
 

賃貸経営を始めて収益物件にしたり、リフォーム・リノベーションや解体、買取サービスの利用などがあります。

 

利益を得るには賃貸経営がおすすめ

入居需要のあることが前提となりますが、最寄り駅までのアクセスが良かったり家賃が周辺相場と比較して安いと、入居者が付き賃貸経営を始められる可能性があります。

特に車好きやバイク好きを対象者としてガレージ(車庫)を設けると、賃貸ガレージハウスとして再生できます。入居者は基本的に車通勤しますので、最寄駅から遠くても関係ありません。またガレージ(車庫)により、車も雨風や粉塵、盗難からも防ぐことができますので、車好きですと家賃を高く設定しても需要が見込めます

MEMO
地方の古い家には適合できる可能性が高くなります。さらに利回りが良くなると、収益還元法により売却価格を高く設定できる可能性も出てきます。

リフォーム・リノベーションする

古い家を修繕工事する場合、リノベーションまでする必要はなく、最低限度のリフォームに留めておいた方が良策といえます。最低限度のリフォームは、水道管や排水管の修繕工事や劣化・損傷の激しい設備・器具などです。

しかしハウスクリーニングだけは施しておいた方が見た目も綺麗になり、売却し易くなります。リフォームとリノベーションとの違いを下表にまとめます。

リフォームとリノベーションの違い

リフォーム費用よりもリノベーション費用の方が高くなります。次にリフォーム・リノベーションするメリット・デメリットを下表にまとめます。

リフォーム・リノベーションのメリット・デメリット

古い家を解体した方が良いケースについて

上記の最低限度のリフォーム費用とハウスクリーニング費用の合計額と比較して解体費用の方が安くつくようであれば、古い家を解体して更地の状態で売却した方が良策といえます。古い家を解体するメリット・デメリットを下表にまとめます。

古い家を解体するメリット・デメリット

不動産会社の買取サービスを利用する

売却を早く済ませたいなどの事情がある場合、不動産会社による買取サービスを利用する方法があります。買取サービスのメリット・デメリットを下表にまとめます。

買取サービスのメリット・デメリット

不動産会社との交渉次第では1か月以内の入金・引き渡しが可能となります。

まとめ

以上、古い家を売却する際のリスクやデメリット、古家付き土地での売却のすすめ、売却するコツ、方法処分について解説しました。どの方法にもメリット・デメリットがあります。しかしポイントは余計な手を加えず余計な経費をかけずに売却する方法がベターだということです。

余計なことをすると、それが裏目に出ることがままあります。先ずは不動産一括査定サイトなどを利用するところから始めて売却価格の目安を知り、情報収集されることをお勧めいたします。

出典:※1 「耐用年数(建物/建物付属設備)」 国税庁