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不動産を共有名義にするメリット・デメリット

この記事を書いた人
中村 昌弘
不動産コメンテイター

都内の私立大学を卒業後、新卒採用で不動産ディベロッパー勤務。 不動産の用地仕入れや、分譲マンションの販売・仲介などを手掛ける。 2016年に独立して以降、不動産関係のライティングも業務の1つに。

不動産を取得するときは、購入者の名前で登記をします。しかし、登記する際に1人ではなく複数人で登記することもあるため、共有名義になるケースも少なくないです。

しかし、そんな共有名義にはメリットもあればデメリットもあり、その内容を知っておく必要があるでしょう。この記事では、そんな共有名義にしたときのメリット・デメリットについて解説していきます。

この記事のざっくりしたポイント
  1. 借入金額を増やせるのが最大のメリット
  2. 離婚売却では非常にデメリット
  3. 贈与になり得るケース

不動産を共有名義にする方法

不動産を共有名義にするメリット・デメリットを解説する前に、そもそも共有名義はどのようなケースのときになるのか?について解説します。不動産購入時に共有名義になるケースは以下の通りです。

共有名義になるケース
  1. ペアローンを組む
  2. 2人で資金を捻出する

不動産の所有者になれるのは、相続以外でいうと「その物件を取得するときにお金を出した人」です。お金も出していないのにその不動産の名義人になるということは、その人に不動産を贈与したということになります。

一方、夫婦が別々に住宅ローンを組む「ペア住宅ローン」で物件を取得すれば、夫と妻の共有名義になります。また、夫が住宅ローンを組み、妻が数百万円自己資金を捻出したときなども、捻出した資金に応じて共有名義となります。

 

なるほど。あくまで「お金を出した人」が名義人になるんですね。

 
 

そうなんだよ。だから、共有名義にしたいからする…というわけではないんだね。このことを踏まえて、次章から「共有名義のメリット・デメリット」について解説していくよ。

 

ペアローンのメリット・デメリット

まず、ペアローンを組むことによってメリットもあればデメリットもあります。その点について以下を確認ください。

ペア住宅ローンのメリット

ペア住宅ローンのメリットは以下の点です。

ペア住宅ローンのメリット
  • 借入額が増える
  • 住宅ローン控除をお互い受けられる

借入額が増える

住宅ローンを組むときに金融機関は借入者を審査しますが、その中で「年間返済額÷年収」で計算される返済比率も審査項目の1つです。返済比率が低いほど返済に余裕があるということなので、住宅ローン審査にも通りやすいです。

たとえば、1人で4,000万円の住宅ローンを組むと返済比率はオーバーするものの、2人で2,000万円ずつ組めば返済比率はクリアできる…などのときにペアローンは利用されます。

 

このように、ペアローンは2人が個別に住宅ローンを組むことなので、それぞれの年収に応じて住宅ローンを組むことが可能なんだよ。

 

住宅ローン控除をお互い受けられる

また、「住宅ローン残高×1%※」が所得税・住民税から控除される、住宅ローン控除をお互い受けることができます。

たとえば、住宅ローン控除を最大で40万円受けられるのに、そもそも所得税・住民税の支払いが27万円であれば、控除される額は27万円です。

一方、2人で住宅ローンを組んでいれば、住宅ローン控除を最大で20万円ずつ受けられ、それぞれ最大の20万円の控除を受けることができれば合計で40万円の控除が受けられます。

 

なるほど。ペアローンを組むことで、2人がそれぞれ住宅ローン控除を受けられるから、住宅ローン控除を最大限まで受けられる可能性が上がるというわけですね。

 

※諸条件によって異なります。詳細は以下を参照となります。

国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm

ペア住宅ローンのデメリット

一方、ペア住宅ローンのデメリットは以下の通りです。

ペア住宅ローンのデメリット
  • 手数料と手間が倍かかる
  • 退職すれば住宅ローン控除は受けられない

手数料と手間が倍かかる

まずは、手数料が2倍かかるということです。手数料の金額は金融機関によりますが、数万円程度の手数料に設定している金融機関が多いです。ペアローンは、あくまで2本の住宅ローンを組むので、たとえ同じ物件の住宅ローンだとしても手数料は別々です。

また、金銭消費貸借契約もそれぞれが締結する必要があるので、手間が倍かかる点もデメリットといえるでしょう。

退職すれば住宅ローン控除は受けられない

また、前項の「メリット」で解説した住宅ローン控除は、あくまで2人とも所得税・住民税の支払いがあることが前提です。ただ、たとえば子供の出産を機に妻が退職した場合、所得はゼロになるので「住宅ローン控除を受けられる」というメリットはなくなります。

また、ローンを分散している分、1人当たりの「ローン控除される最大の金額」は少なくなっています。そのため、夫婦ともに住宅ローン控除を受けられないと、1人で住宅ローンを組んでローン控除を受けた方が、高額な控除になる可能性もあります。

 

ペアローンはメリットもあるけど、こんなデメリットもあるんですね…。

 
 

そうなんだよ。特に、退職時のローン控除幅の減額は大きなデメリットになり得るので注意しよう。

 

相続時にはメリットが大きい

次に、相続時のメリットについて解説します。このメリットは、ペアローンを組んで共有名義にするパターンでも、自己資金を捻出して共有名義にするパターンでも同じです。

この点を理解するためには以下を解説していきます。

相続時のメリットを理解するために
  • 相続税の計算方法
  • 共有にしておけば相続税が少なくなる

相続税の計算方法

まず、相続税は以下の計算式で算出します。

相続税の計算式
相続税=(相続税評価額-基礎控除)×税率×控除額

相続税評価額は、現金なら額面通りの金額ですが、不動産は土地なら路線価で算出する金額、建物なら固定資産税評価額になります。

そして、基礎控除は「3,000万円+法定相続人×600万円」なので、仮に相続人が2人なら4,200万円が基礎控除額です。

共有にしておけば相続税が少なくなる

たとえば、相続税評価額が6,000万円のマンションを相続し、法定相続人が2人だとします。その場合は※、「(6,500万円-4,200万円)×15%-50万円=295万円」が相続税です。

一方、このマンションが夫5割、妻5割の共有名義であり、夫が亡くなって相続が発生したとします。この場合、夫の持ち分である5割…つまり3,000万円分のみが相続税の対象となります。

そのため、基礎控除額である4,200万円を下回る相続税評価額なので、全額控除でき相続税はゼロ円です。仮に、妻も亡くなり子供に相続するとしても、相続税評価額は3,000万円なので、子供は相続ゼロでマンションを相続できます。

 

へ~。共有にすることで相続時の評価額を下げることができるんですね。

 
 

そうだね。評価額を下げるというよりは、「相続する部分」を少なくするというイメージの方が近いかもね。

 

「国税庁 相続税の税率」を参考に記述をしています。

売却時はデメリットになり得る

ただし、不動産を共有名義にすると売却時はデメリットになり得ます。この点については、以下のシチュエーションで見ていきましょう。

共有名義の物件でよくあるケース
  • 夫婦が忙しい
  • 離婚時の売却

中村編集者

 

簡単にいうと、共有しているということは、売却時は共有者全員の同意が必要なんだよ。だから、1人だけの意志では売買契約は結べずに面倒な場合があるんだ。

 

夫婦が忙しい

たとえば、物件を売却するときに、夫婦ともに仕事が忙しいとします。どちらかに主導権があれば良いですが、夫も妻も自分の売却希望金額があれば、お互い揉める可能性もあります。

何より、夫婦間で相談する時間も取れないとなると、たとえば「100万円値引きで購入する人がいる」という状況のときに、即返答することができずに購入者を逃してしまう場合もあるでしょう。

このように、共有名義の場合は決済権者が2人いる分、事前にきちんと話し合っておかないとスピーディーに売却できない可能性があるのです。

離婚時の売却

また、離婚時の売却も揉める可能性があります。特に、すでにどちらかが退職していて、夫婦間で収入格差がある場合は注意です。たとえば、はじめは夫婦とも働いており、ペアローン(共有名義)にしていたものの、妻が仕事を辞めて専業主婦になっていたとします。

この状況で不動産を売却するということは、妻は今後の生活のために「なるべく高く売りたい」と思っているかもしれません。一方、夫は収入面の不安はないので、「早く売る」方を優先している可能性があります。

このようなときは、前項と同じくスピーディーに売却が進まずに、ズルズルと売却活動が長引くリスクがあるのです。

贈与と見なされるデメリット

最後に、贈与と見なされるデメリットについても以下を解説します。

贈与と見なされるデメリット
  1. 贈与と見なされるケースとは?
  2. 贈与税は超高税率

これは稀なケースではありますが、リスクとしては大きいので注意しましょう。

贈与と見なされるケースとは?

贈与と見なされるケースとは、たとえば4,000万円の物件を購入するときに、夫が3,000万円のローンを組み、妻が1,000万円の自己資金を捻出したとします。

このとき、通常であれば「3,000万円:1,000万円」と同じ割合で所有権を登記するので、「75%:25%」の登記になります。しかし、このときに50%:50%で登記してしまうと、夫の持ち分である25%を妻に贈与したと見なされる可能性があります。

 

本当にそんなことあるんですか?

 
 

本当のところを言うと、わたしもこのようなケースで贈与税を請求された人は見たことはないね。

 
 

そうなんですね!正直そこまで税務署は細かく見ない…ということですか?

 
 

税金のことを税理士ではない私がとやかく言えないんだけど…正直にいうと恐らく細かく見ていないと思う。現に、上記のように捻出した資金に関係なく登記している例はいくつも見ているけど、贈与税が発生したケースはないからね。でも、原理原則として仕組みは覚えておいて損はないよ。

 

贈与税は超高税率

仮に、贈与税がかかれば以下のような高税率になるので、リスクは大きいといえます。

 

先程のように、贈与と見なされるケースは少ないと思うけど、不用意に持ち分割合は変えない方が良いよ。万が一贈与と見なされたら、上記のように非常に高い税率になるからね。登記時は司法書士に相談できるので、そのときに考えたら良いよ。

 
 

まとめ

このように、不動産を共有名義で購入すると、特にペアローンによる「借入額が増える」という大きなメリットが受けられます。一方、売却時の手間やローン控除には十分注意が必要です。また、基本的には捻出した資金に応じて持ち分割合を定めることをおすすめします。