【一級建築士が解説】マンションの間取り図でチェックしたい下がり天井と梁

新築マンションは、建物が完成する前に販売される場合が大半です。室内の確認は、マンション販売用パンフレットに掲載されている間取り図で行うしかありません。

そこで一番チェックしたい箇所の一つが、下がり天井と梁(以下、下がり天井)です。場合によっては、部屋の天井中央部に下がり天井があるマンションもあります。マンション購入の際、下がり天井の観点からの注意点を解説します。

この記事のざっくりしたポイント
  1. 下がり天井ができる場所
  2. 下がり天井を作るディベロッパーの苦しい都合
  3. 最近のトレンド

1.下がり天井の正体

1-1.下がり天井の正体

下がり天井は、マンションなどで天井の一部分が他よりも低くなっている状態をいいます。したがって、天井高が一定ではありません。

1-2.下がり天井の原因

下がり天井の原因は大梁・小梁と排気ダクトです。以下に説明します。

1-2-1.大梁・小梁

一般的に鉄筋コンクリート造のマンションは建物全体を支える構造部材として柱と大梁(ラーメン構造)があります。住戸の四隅の柱と柱をつなぐ構造部材として大梁があり、その大梁の上に床スラブが乗る形式となります。

住戸と住戸の間にある戸境壁に沿った天井や、間口に当たるバルコニー側と共用廊下側の天井に大梁の突出部分である下がり天井が出てきます。

上階の床スラブの振動を小さくし、遮音性を大きくするために、小梁が大梁と大梁の間に掛けられます。小梁も部屋の天井に突出することがあり、下がり天井になります。

大梁・小梁による下がり天井
大梁による下がり天井

1-2-2.排気ダクト

キッチン・トイレ・浴室の排気ダクトなどのパイプスペースを、間口に当たるバルコニー側か共用廊下側に通す必要があります。それが天井から突出し、天井の一部が低くなり、下がり天井になります。

1-3.下がり天井の位置

大梁による下がり天井は、住戸と住戸の間にある戸境壁の天井や、間口に当たるバルコニー側と共用廊下側の壁の天井に出てきます。また排気ダクトによる下がり天井は、酷い場合にはリビングや部屋の中央に出てくるマンションもあります。

1-4.下がり天井の表記

下がり天井は図面上で点線にて表記され、点線が1本の場合と2本の場合があります。その違いについて説明します。

大梁・小梁による下がり天井を点線で表記

1-4-1.点線が1本

壁際に点線が1本表記されている場合は、壁際の天井が突出し下がり天井になります。部屋の中央部に点線が1本表記されている場合は、部屋の約半分が下がり天井になります。

通常のマンションの部屋部分の天井高は2.4m~2.5mですが、下がり天井の天井高は2.1m~2.2mになることが多いです。

1-4-2.点線が2本

部屋の中央付近に点線が2本表記されている場合は、天井の中央部に大梁か排気ダクトがあり、20cm~40cmほど天井から突出した状態となります。この場合は下記の注意点でも触れますが、照明器具の設置位置やリフォームにも支障をきたします。

2.下がり天井の背景

2-1.下がり天井と階高・天井高との関係

2-1-1.階高

階高とは、建物の各階の高さのことで、建物の1階(1層)分の高さになります。下の階の床面から上の階の床面までの高さになります。

2-1-2.天井高

天井高とは、部屋内の床面から天井面までの高さのことです。

2-1-3.階高と天井高との関係

【モデルケース1】

一般的にマンションの階高は3mの場合が多いです。ここで床と天井の厚さを下記の様に設定したとします。

  二重床の厚さ :フローリングや下地などの仕上げに必要な厚さ:15cm

  床スラブの厚さ:コンクリート部分の厚さ          :30cm

  二重天井の厚さ:石膏ボードや下地などの仕上げに必要な厚さ :15cm

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  合計     :下階の天井面から上階の床面までの厚さ   :50cm

よって、天井高は階高3mから天井面から床面の厚さ50cmを差し引いて2.5mになります。

2-1-4.階高と天井高の違い

階高は設計段階で構造計算などを経て決められます。建物が竣工すれば階高の変更は出来ません。天井高は部屋内の床と天井仕上げの方法により、変更することが可能です。リフォーム・リノベーションにより天井高を変更できます。

2-1-5.階高が低いと?

高級マンッションでは、階高(例えば、3.5mなど)を高くし床スラブを厚くして二重床・二重天井の高さを充分に確保しています。二重天井の中に大梁・小梁や排気ダクトを隠すことが出来るので、下がり天井は現れません。しかし、分譲価格は高くなります。

一方、階高が低いと二重床・二重天井にすることが出来ず、直床・直天井となります。直天井には、大梁・小梁や排気ダクトを隠す空間がありませんので、下がり天井となります。

2-2.建築主(ディベロッパー)の事情

販売住戸数増加による売上増加

【モデルケース2】

例えば10階建て、階高3m、住戸が5戸並びのマンションがあるとします。天井高等はモデルケース1の場合を設定します。全住戸数は50戸となります。

ここで建築主(ディベロッパー)が階高を抑えても販売住戸数を増やしたいと考えたとします。直床・直天井を採用して階高を2.7mに設定しました。階高を1階(1層)あたり0.3m低く設定することが出来、合計10階分の階高を3m浮かすことが出来ます。

すると、10階建てのマンションが11階建てのマンションにすることが出来、販売住戸数を5戸増やすことが出来ます。1戸当たりの販売価格が4,000万円だとすると、売上は2億円上がります。

  二重床・二重天井 直床・直天井
階  高 3.00m 2.70m
天 井 高 2.50m 2.50m
床 厚 さ 0.15m (直床)0.00m
スラブ厚さ 0.20m 0.20m
天井厚さ 0.15m (直天井)0.00m
階  数 10階建て 11階建て
販売戸数 50戸 55戸

階高による階数・販売戸数の違い

もしくは、階数は10階建てのままにし、建物全体の工事費を1階分抑えることが出来ます。販売価格が同じであれば、工事費は減少するので、建築主(ディベロッパー)側の利益増加に繋がる算段です。

しかし階高を低くすることにより、下がり天井の突出部分がより大きくなり、居住性を大きく損なう結果となります。

2-3.直床・直天井・二重床・二重天井

ここで、頻繁に出てくる直床、直天井、二重床、二重天井の説明をします。

2-3-1.直床

直床は、床スラブ(コンクリート)の上面に直接仕上げ材(フローリング等)を張るものです。床スラブと床面との間に空間を設けるものが二重床です。

直床になりますと、水回りの水道管・排水管を床スラブに埋め込まなければなりません。その場合はリフォーム・リノベーションをする際、水回りの位置変更が困難になります。

2-3-2.直天井

直天井は、天井のスラブ(上階の床スラブ)の下面に直接仕上げ材(クロス等)を張るものです。天井のスラブと天井面との間に空間を設けるものが二重床です。

直天井になりますと、照明器具用の電気配線や照明器具を取り付ける設備をコンクリートの床スラブ(上階の床スラブ)に埋め込まなければなりません。リフォーム・リノベーションをする際、照明器具の位置変更が困難になります。

3.下がり天井の注意点

大型の新築マンションでは、販売促進のためモデルルームを設置しますが、全住戸の中で、一番良い住戸をモデルルームにします。

実際には下がり天井が存在するにも関わらずフラットな天井にしている場合もあります。その為、モデルルームだけを見て購入を決めるのは、後々のトラブルの元になります。

また、WEBサイトやチラシ等の広告図面は簡易図面が多く、下がり天井の記載のない場合が多いです。事前に確認するには、モデルルームに準備されている図面集の間取り詳細図を見ます。

上記にもありますが、下がり天井は点線で表記されています。以下に注意点を説明します。

3-1.下がり天井は移動できない

下がり天井は、大梁・小梁や排気ダクトとなるため、移動することが出来ません。リフォームする際、間取りの変更を行う上でも支障をきたします。

3-2.下がり天井は陰になりやすい

部屋の中央に下がり天井がある場合、天井の照明によって、下がり天井の陰が出来、見た目にも見苦しくなります。下がり天井のあるマンションは居住性に欠けます。

3-3.家具が置くことが出来ない

壁隅に下がり天井がある場合、家具を置こうとしても下がり天井に当たってしまい、予定していた位置に家具を置くことが出来ないこともあります。

4.トレンド

高級マンションは二重床・二重天井になっており、その厚みも充分確保されていますので、少なくとも下がり天井はありません。逆に言えば、下がり天井があるマンションは高級マンションとはいえません。

一般的なマンションで比較的多いのは、二重床・直天井もしくは直床・二重天井のマンションです。二重天井になっていても、空間の厚みが小さいと下がり天井は出てきます。

最近の新築マンションは、住宅品質確保の観点から、さすがに直床・直天井のマンションを見かけなくなりました。しかし中古マンションには多いので、注意を要し、出来たら避けた方が無難といえます。

以上、「間取り図でチェックしたい下がり天井と梁」を説明しました。マンション購入の際、平面図だけに気を取られがちですが、立体的にも注意を向けることにより下がり天井という思わぬトラブルを回避することが出来ます。

実際のマンション販売現場でもトラブル案件の一つになっているのが、下がり天井です。モデルルームだけでなく、実際の購入候補の住戸の間取り詳細図を確認しながら、購入決定をお勧めします。

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