投資用不動産を持つと相続税対策になる理由

相続は意図せず起こりその時に初めて引き継がれる財産の全貌を知ります。事前に相続税対策の概要を知っておいて後で活かせるように準備を始めていたら・・とその時になって悔やむことがないように今のうちから学んでおきましょう。ここではその対策のひとつである投資用不動産を所有した不動産投資(賃貸)事業を活用する事例をご紹介します。

相続税額を計算する時に使用する評価額を下げつつあらゆる控除を使うことを目的として解説します。

投資用不動産を持つとどの程度相続税が安くなるのか?

平成25年(2013年)から公示地価も相続税収も上昇に転じています。同時に相続税率も平成27年(2015年)に最高税率が引き上げられました。将来の相続時には今よりも多くの相続税を納めなければいけない可能性も考えられます。

相続税の算出方法は以下の通り。つまり評価額を下げてより多くの控除を使えば相続税は下げられます。

相続税額
相続税額 = ( 相続財産の評価額 ー 控除額 ) x 相続税率

相続財産がもし現金や有価証券ならその額面価格を使って算出するしかありません。しかし現金などではなく投資用不動産で保有すれば建物の固定資産税評価額・土地の路線価・賃貸不動産の控除額などが加味されて 50% ~ 60% の評価額に引き直され計算されるため、現金などで引き継ぐよりも遥かに効果的な相続税対策になるのです。

事務員
50~60%はすごいですね…詳しく教えてください!

現金を不動産に変えると相続税評価額が半分以下になることも!?

現金で5,000万円を相続する場合と投資用不動産で相続する場合を比べてみましょう。

基礎控除額と相続人の人数は考慮せず相続税評価額について現金と不動産の違いに注目します。

① 現金で5,000万円の場合

【 相続税評価額 = 5,000万円 】

② 5,000万円で購入の土地付き建物で賃貸契約されている場合

土地建物の実勢価格案分を土地3,500万円・建物1,500万円とすると

【 相続税評価額  = 2,744万円 】 (土地分:2,009万円 + 建物分:735万円) 

投資用不動産で引き継げば相続税評価額に【 2,256万円分の差 】が出るのです。

②の計算式の各係数についてもう少し解説しますとこうです。

(A)土地について
貸家建付地の相続税評価額
貸家建付地の相続税評価額= 自用地の相続税評価額 x(1-借地権割合x借家権割合x賃貸割合)

= 3,500万円x0.7 x(1-0.6x0.3x1.0) = 2,009万円

・自用地:自分で利用する土地のこと:時価の70%

・借地権割合:路線価図の当該土地部分を参照する:仮で60%

・借家権割合:一定係数の30%

・賃貸割合:入居率のこと:満室稼働として100%

(B)建物について
賃貸用建物の相続税評価額
賃貸用建物の相続税評価額 = 固定資産税評価額 x(1-借家権割合x賃貸割合)

 = 1,500万円x0.7 x(1-0.3x1.0) = 735万円

・固定資産税評価額:時価の70%

・借家権割合:一定係数の30%

・賃貸割合:入居率のこと:満室稼働として100%

事務員
なぜ現金から不動産に換えたり、人に貸すと評価額が下がるんですか?

柴田編集者
それは税法上そう決められているからなのですが、ひとつの理由としては資産の流動性(換金性)から影響を受けています。現金5,000万円ならすぐに使えますが、5,000万円の不動産なら直ぐに他のものに換えられませんし、その不動産を他人が賃借していれば更に換えずらくなるため、評価が下がるんです。

更に「小規模宅地等の特例」が一定の条件下で事業用の宅地に適用されればより相続税評価額を下げることもできます。

ローンを組むと相続税がゼロになる場合も!?

相続財産である不動産にローンがまだ残っていた場合についてはプラスの財産からそのローン残額を控除した残りが相続財産とみなされその額から相続税を算出します。この財産の差し引きのことを債務控除といいます。

この債務控除も投資用不動産を購入して相続税対策を兼ねた不動産投資をする上で欠かせない考え方です。2つの例でご説明しましょう。団体信用生命保険は加入しない前提です。

(ⅰ) マンションの1室を購入し貸し出した場合

5,000万円のマンション1室をローンで購入、建物価格4,000万円、土地価格1,000万円

・土地評価額 = 1,000万円x0.7 x (1-0.6x0.3x1.0) = 574万円

・建物評価額 = 4,000万円x0.7 x(1-0.3x1.0) = 1,960万円

・相続課税財産 = 相続財産 ー 債務控除(ローン金額)

= 574万円+1,960万円 ー 5,000万円 = ▲2,466万円

(ⅱ) 自己所有の土地にアパートを建てた場合

5,000万円のローンで建物を5,000万円で建築、所有土地の時価5,000万円

・土地評価額 = 5,000万円x0.7 x (1-0.6x0.3x1.0) = 2,870万円

・建物評価額 = 5,000万円x0.7 x(1-0.3x1.0) = 2,450万円

・相続課税財産 = 相続財産 ー 債務控除(ローン金額)

= 2,870万円+2,450万円 ー 5,000万円 = 320万円

これら2つ例のように、団体信用生命保険なしで投資用不動産を購入し、あえて借金を残し、相続税を減らす方法は、多くの資産家が相続税対策として取り組んでいる手法です。

しかし、バブル期に同様の取り組みを行った地主など、相続税対策をしたことが原因でローン破綻してしまったケースも複数存在しています。

そうならないためにも、投資用不動産を活用して相続税対策を行う上で知っておかなければ行けない注意点をお伝えしましょう。

投資用不動産を活用して相続税対策を行う場合の注意点とは?

相続税対策に都合が良い不動産を所有することが目的になりすぎて不動産投資の本質(事業として成り立つ条件)を見失った投資用不動産の取得が常態化しています。

事務員
相続税で損したくないという気持ちにつけ込んで勧められた物件が実はポテンシャルの低い物件だとしたら…。

やりすぎると追徴課税を受けるリスクも

このような相続税対策としてよく話題に上がる事例にタワーマンション節税があります。マンションの特徴がそのまま節税効果に直結するからなのです。

① 土地の持分割合が小さい

マンションは上に積み上げられた形状なので底地の広さに対する住戸数が多くなります。底地を全住戸の総専有面積で割って自分が所有する住戸の専有面積を掛けたものが自分の土地の持分です。その小さな持分に対する評価額ですから自ずと戸建てなどに比べて格段に低い評価額になるのです。

② 階数によって建物評価額に差が無い

建物評価額は固定資産税評価額を使います。マンションの場合はどの住戸でも固定資産税評価額は階数の影響を受けず高層階も低層階も差はないのです。

このように土地持分が小さいことや階数で影響を受けない建物評価額の影響で実勢価格との間に大きな差が生まれやすいので実勢価格が高額なタワーマンションの特に高層階が利用されるようになったのです。例えば1億円で取得したタワーマンションの評価額が2,000万円なんてことが起こるのです。

事務員
高層階に住めば住むほど固定資産税がお得になるってことですか?ちょっとズルくないですか?

柴田編集者

そう!国税庁も同じところに目を付けました。2019年8月に注目すべき判決が東京高裁で下されています。

資産家の男性が生前に2棟のマンションを購入し亡くなりました。相続人らは路線価と固定資産税評価額を引用し相続税をゼロで申告。申告自体は国税庁が定めた方法で適切に行われましたが、国税庁は物件の評価が適正ではないとして高額の追徴課税処分を行いました。実体とかけ離れた評価額かどうかを現状から判断したという事例です。

今後同じような理由で追徴課税案件が増えていくでしょう。実勢価格と評価額の乖離ができる仕組みと将来のリスクは理解しておきましょう。参考までに2017年4月1日以降に売買契約が締結されたものは実勢価格を加味した各戸ごとの評価額に補正されるようになりました。今はまだ差はそれほど大きくありませんが今後の動向として注目です。

20198月の判決が出た際には、路線価に基づく相続税の計算が否認されたと波紋を呼びましたが、同様の相続税対策が今後全て否認されるのかというと、そうではありません。この事例で特に問題となったポイントは以下の3つ。

・ 本人に認知症の兆候が出はじめた時期に親族が本人の代理で投資用不動産を購入した。

・ 相続税の申告が終わって程なくして相続開始前に購入したその不動産を売却している。

・ ローン申込時に相続税対策のため不動産を購入する旨の記載が残っていたこと

このような悪質な租税回避行為が認められた場合には、追徴処分を命じられるリスクは高まりますが、『相続直前に相続税対策を行わない』『相続後すぐに不動産を売らない』『相続税対策を主目的として不動産を持たない』などのポイントを抑えることで、そのリスクを軽減させることは十分に可能なのです。

不動産投資について理解する

ここからがこの投資不動産を使った節税対策の中でも核心の部分になります。

言うまでもありませんが投資事業を成功させることが何よりも重要です。ただし目指す地点は至ってシンプルで「不動産としての価値を高めて収益を最大化する」それだけです。

不動産としての価値とはつまり、自身が暮らして快適だと思う居住環境を備えた物件であるということです。

住む家を決める際には希望条件をいくつも挙げますがこの条件を沢山備えた家が良い投資物件です。金額やタイミングなど制限がある中で物件を選ぶことになるでしょうが、『もし自分が学生ならこの学生向けマンションにこの条件で入居するか?』といった感覚が投資にも生きてくるのです。

リスクを正確に把握する

一方、多くの不動産投資初心者が正しく認識していないのは不動産投資事業のリスクです。

不動産投資事業のリスク
・滞納の督促:家賃が入らない・追い出せない
・自然災害 :火事・地震・水害・飛来物・落雷
・競合物件 :同地域の競合によって客付き悪化
・空室期間 :なかなか客が付かず収益が悪化
・設備投資 :賃貸設備の刷新でお金がかかる
・迷惑行為 :騒音・ゴミ・不特定多数の出入り
・犯罪や事故:入居者が被害に遭う・自死する

※その他にも金利の上昇・家賃相場下落・嫌悪施設の建設・などがあります。

対策や改善ができるもの、急を要するもの、致命的なものなどありますがこれらのリスクは物件管理業者(プロ)に解決を任せましょう。

不動産投資で得られるメリット

次はメリットについてですが、やはり家賃収益が得られる点です。

自身の年金代わりにもなり、相続すれば収益を生みだす仕組みを次世代に残せるのもポイントです。

またローンを組むと長期間の返済が必要にはなりますが、手持ち資金を減らさなくて済むばかりか手持ち資金では購入できないような大きな規模の物件を手に入れられます。

柴田編集者
大きな物件を所有するということは少ない投資で節税効果を高めつつより大きな収益も生み出せるということなのです。

また不動産購入で使わなかったその手持ち資金で金融商品を購入するなど別の相続税の節税方法を準備する展開も見えますので、投資用不動産をローンで購入するのはメリットと捉えるべきではないでしょうか。

しかし必ずしも成功するわけではありません。田舎に行くとよく見かける生活施設が何もない所にポツンと建つ小規模なアポート。おそらくこれはマンションデベロッパーから相続対策の勧めで不動産投資事業を始められたものでしょう。このように相続税の節税ありきでスタートすると人気のない物件をこれから先もずっと抱え続け売るにも売れない状況を招くでしょう。そうならない為にも不動産の相談ができる良いパートナーを見つけて良い物件を探すことに注力しましょう。

まとめ

不動産投資物件購入による相続税の節税対策は今でも最も効果的な方法のひとつに間違いありません。しかしそれ以前に投資事業として成功しやすい物件に出会い上手に運営していくことが大切です。

その為に仕組みを理解したり将来の税制の変化を予想しますが、新しいことを採り入れるのに漠然とした不安は付きものです。しかしそれを乗り越え動いた分だけ将来の不安は安心感へと変わります。何もせずその日を迎え相続税を黙って納めるのか、それとも対策の結果軽減された相続税を晴れやかな気持ちで納めるのか、貴方はどちらを選びますか?

今は情報が溢れすぎていますのでセミナーに参加するなど信頼できる情報筋から効率的に学ぶべきでしょう。相続税の節税対策はいつ起こるかわからないその時に効果を発揮するよう準備するものです。はやく学んではやく着手することを強くお勧めします。

初めての不動産投資は不安ですよね?

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